| フェリーに揺られ宮浦港に到着すると、島に降り立った瞬間から展覧会は始まっています。最初に目にする作品は、おそらく草間彌生の「赤かぼちゃ」ではないでしょうか。船着場の緑の芝生に、不意に現れる赤いかぼちゃ。瀬戸内の青い海に向かって、自身の存在を強く主張しているかのようです。穏やかな島の空気を一変させる赤かぼちゃは、ここから始まる個性豊かな展覧会を予感させます。 |
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草間彌生「赤かぼちゃ」2006
世界最大のかぼちゃ
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本展の拠点となるのが「本村ラウンジ&アーカイブ」です。宮浦港から町営バスに乗り「農協前」で下車。徒歩数分の「本村ラウンジ&アーカイブ」を起点に、碁会所の須田悦弘の「椿」や、旧名家を彩る千住博の日本画(「ザ・フォールズ」ほか)、かつての歯医者の建物をまるごと作品にした大竹伸朗の「舌上夢/ボッコン覗」など、6名のアーティストの作品を見ることができます。体力に自信のある方は、石階段を登り、八幡神社拝殿へお出かけください。拝殿には、なかなかにふてぶてしい面構えの猫(上原三千代「直島の局」)が待っています。海を隔てた向島へは、本村港から出ている小型船に乗ります。ここには、瀬戸内の活動拠点として向島に居を構えた、川俣正の「向島プロジェクトハウス」 があります。川俣正「向島プロジェクトハウス」
は、会期中、アーティストによって継続して制作活動が行われ、日を追って作品は進化していきます。
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本村地区の古い民家。鮮やかなのれんが目を惹く
(のれんは、加納容子「のれん」プロジェクトによって各家屋に掛けられたもの)
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本村地区では、「NAOSHIMA STANDARD2」とともに、「家プロジェクト」を鑑賞することができます。1997年に始まった「家プロジェクト」は、直島の古い家屋を改修し、家の空間そのものを作品化したものです。宮島達男の「角屋」、ジェームズ・タレルの「南寺」、杉本博司の「護王神社」など、古い家屋と融合したアートに触れることができます。こうした古く、美しい町並みに魅せられてか、ここでは散策を楽しむ夫婦や家族連れなど、多くの人々が、ゆっくりと島の時間を過ごしています。 |
本村地区の南、積浦には「コメプロジェクト」によって開墾された田んぼがあります。コメプロジェクトは、直島で数十年来途絶えていたコメづくりを復活させ、島の生活をもう一度見直そうという思いから始まりました。約3反(約3000平米)の田んぼでは、10月には稲刈りが行われました。本展キュレーターの秋元雄史氏(地中美術館館長)は、「コメづくりは土地とのかかわりがもっとも深いものである。コメづくりが美術作品とは言わないが、本質的には何も変わるところがない創造行為と考えている。」と語りました。
このほか、ベネッセハウス周辺では、岸壁に展示された杉本博司の作品や、小沢剛による豊島の産業廃棄物からつくられた88体の仏像、また、直島で最も大きなスーパーマーケット、三菱マテリアル周辺では、ピンホール写真で直島を撮影した宮本隆司「ピンホール直島」、瀬戸内名産のタコを題材とした三宅信太郎の「魚島潮坂蛸峠」を見ることができます。
島全体を舞台として、そこに暮らす人々の生活や歴史と深く関わる作品を提示する本展では、アーティストたちが捉えた直島が凝縮され、拡大され、時に昇華され、それぞれのアプローチから「芸術の日常化」が表現されています。自身の生活を見つめること、美しさを知り、育むこと。アートという「力」が、人々を刺激し、島に新たな魅力を与えている。本展を通して、直島はそんな場所だと感じました。アートがもたらす驚き、楽しさ、美しさや、日々の生活が育む強さ、ぬくもり。そして、この地に生きる人々と大自然。本展では、直島のさまざまな、そしてたくさんの感動に出会うことができます。
(写真・文 インターネットミュージアム)
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