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出光美術館では2007年4月28日(土)より、「肉筆浮世絵のすべて―その誕生から歌麿・北斎・広重まで―」が開催されています。
■出光佐三と出光コレクション

展覧会会場入口
出光美術館の浮世絵コレクションは、その全てが肉筆画です。江戸時代の各年代・各地域の代表的な絵師の作品を網羅した、質の高い収蔵品となっています。このコレクションは出光興産の創業者・出光佐三(1885〜1981)の収集品を元とし、彼の趣味嗜好を色濃く残したものだといいます。今回の展覧会は、豊富な出光美術館のコレクションの全貌を初めて公開し、肉筆浮世絵の魅力すべてをご紹介しようとするものです。
■肉筆浮世絵の魅力

展示風景

展示風景
近年、「肉筆浮世絵」に関する注目が高まってきています。これまで、「浮世絵」としてよく知られていたのは、葛飾北斎(1760〜1849)の「冨嶽三十六景」や歌川広重(1797〜1858)の「東海道五拾三次」などの木版画が主でした。しかし「浮世絵」とは、「浮世=当世」、つまり人々の日常の生活や風物など全般を描いた画を指す言葉であり、その技法も版画にとどまりません。北斎や広重などの高名な浮世絵師も、ほぼ例外なく、版画制作の傍ら熱心に肉筆浮世絵の制作を行っていたのです。
肉筆浮世絵の魅力は、絵師が自ら顔料を調合し、時間をかけて緻密に描かれることにあります。即ち、「絵師が思い描いたとおりの色彩と描線が、画面上に再現される」という点が、刷師・彫師などとの共同作業である版画とは大きく異なるのです。大量生産の版画に比べると、歴史を考証するにあたってはより適しているといえるでしょう。
絵師による直筆の描線は、じっと見つめると動き出すかのような生き生きとした力と、圧倒的な存在感を持っています。本展は、江戸の賑わいに肌で触れるような肉筆浮世絵の世界をたっぷりと味わいながら、歴史をたどる展覧会です。そのタイトルの通り、二世紀以上にわたる浮世絵の歴史を総覧し、「浮世絵」の奥深さを楽しむことができます。
■展覧会の構成

展示風景

展示風景
展覧会では、各時代に人気を博した流派ごとに作品が展示されています。
寛文美人と菱川派
鳥居派と懐月堂派
奥村・川又・西川の各派
宮川派と北尾派
勝川派と歌麿・栄之
北斎一派と歌川派
展覧会の冒頭には、浮世絵の前史である「寛文美人」が展示されています。寛文年間(1661〜72)に描かれた美人画の特徴は“無背景”と“ひとり立ち”で、後の色彩鮮やかな浮世絵とは対照的な、どこか素朴で落ち着いた印象を受けます。次いで元禄期(1688〜1704)に活躍したのが、遊里風俗を描写対象とした菱川派と、役者絵の礎を築いた鳥居派です。また、宝永期(1704〜11)に人気を博した懐月堂派の個性的な描法も展示され、この時期のおおらかでのびやかな描線は、歌麿・北斎の浮世絵黄金期への発展を予感させます。

展示風景
享保期(1716〜36)以降には、江戸の奥村・川又、上方の西川派の比較をすることができます。色香を押さえ、優美で華やかな女性美を描き出した江戸に比べ、上方で描かれるのはしっとりと可憐な京の遊女の姿です。東西の好みの違いに加えて、その誕生からほぼ1世紀を経た浮世絵の潮流を感じることができます。
宮川派・北尾派の活躍した18世紀前期の絵には、それまでとは一線を画したといえる様式美の確立を見て取ることができます。続く勝川派、歌麿・栄之の時代に揃うのは、一見の価値がある逸品ばかりです。特に、大名さえも虜にしたという勝川春章の「美人鑑賞図」は散りばめられた色彩の鮮やかさが目を奪う名品です。配置の巧みさも加え、まるで動き出さんばかりの生き生きとした冴えを見て取ることができます。
展覧会の最後を飾るのは、浮世絵界の寵児・葛飾北斎の造形美と、北斎とともに幕末の浮世絵界をリードした歌川派の作品です。計算しつくされた描線、鮮やかな色彩、浮かび上がるような着物の質感など、どれをとっても感嘆させられる作品ばかりです。また本展には、新たな北斎の魅力を発見できる、初公開の北斎作品が2点展示(全期間展示)されています。
インターネットミュージアムではこれまでに、2005年の「北斎展」(東京国立博物館)2006年の「江戸の誘惑」(江戸東京博物館)を取材し、浮世絵の魅力をご紹介してきました。浮世絵の歴史を流派ごとに総覧する今回の展示は、それらに続く注目すべき展覧会といえるでしょう。ぜひ会場を訪れ、じっくりと「肉筆浮世絵のすべて」をご堪能ください。

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