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 最近、さまざまな場面で「ワークショップ」という言葉を目にすると思いませんか?住民参加型のまちづくり活動から、芸術分野、企業研修、社会教育、環境学習など、ワークショップは幅広い分野で行われています。
 ワークショップとは、もともと「仕事場、作業場」という意味です。しかし、現在では「参加型の研修の場」という解釈が一般的になってきています。なぜワークショップはこんなにも人気があるのでしょう? ワークショップの魅力は、実際に参加した人にしか分からないものとも言われています。

 「新しい学びのスタイル」と称されるワークショップの手法の中には、博物館が抱える課題に対する解決の糸口があるかもしれません。そんな思いを抱きながら、インターネットミュージアムは、ある団体の活動を取材しました。それが"CANVAS"です。


 

 CANVAS(キャンバス・http://www.canvas.ws/)は、「こども向け参加型創作・表現活動の全国普及・国際交流を推進するNPO」として、 政府やマルチメディア振興センターの支援のもと、2002年11月に設立しました。 「こどものための"創造の場"と"表現の場"を提供し、豊かな発想を養う土壌を育てる。」こうした目標に向けて、CANVASは国内外の団体・人と新しいネットワークを形成し、世界規模の活動を行っています。MIT(マサチューセッツ工科大学)で開発された技術を取り入れたり、エクスプロラトリウムなど世界各国のこども博物館と連携したり、デジタル技術を積極的に活用するなど、新しいアプローチによって、CANVASはワークショップを中心とした「こどもたちの活動の場」の提供とその活動の普及に努めています。


 



 常に新しい発想で、デジタルやメディアを使ったこどもたちのためのワークショップや情報発信の場を提供するCANVAS。CANVASのこれまでの活動から2つのワークショップを紹介するとともに、 日本初の「ワークショップ専門施設」としてこどものためのワークショップを積極的に展開するCAMPのワークショップから1件を紹介します。

ワークショップ (主催:CANVAS)
(全国マルチメディア祭2002 in 岡山)

(クリエイティブ フォト ワークショップ/クリケット ワークショップ)

「クレイメーション」ワークショプ (主催:CAMP)




 フェローとは、CANVASのメンバーとして団体の運営に携わり、調査・研究活動やワークショップの開催など、CANVASの活動を推進する方々のことです。CANVASのフェローには、 学校・教育関係者や研究者、児童館・科学館・博物館の職員、 企業関係者、また各地でワークショップの活動をしている方々、そしてさまざまな分野のアーティストなど、多彩な分野から熱意のある方々が参加しています。

 

 

CANVASは産学官の連携を積極的におしすすめ、多くの研究機関・団体とパートナーシップを結んでいます。

CAMP
MIT メディアラボ
メディアラボ ヨーロッパ
ハンズ オン ヨーロッパ
ラーニングラボ デンマーク
FUTUREKIDS
エクスプロラトリウム
Capital Children's Museum
Kindermuseum Amsterdam
Children's Museum of
Munich
HET Kindermuseum
ZOOM
Exprimentarium
Papalote Museo del Niño
The Museum of Greek 
Children's Art

MuPAI (Museo Pedagogico De Arte Infantil)
スタンフォード日本センター
シンガポール・サイエンス・センター
ユネスコ
総務省
RIETI (独立行政法人 経済産業研究所)
マルチメディア振興センター
東京大学
甲南女子大学
公立はこだて未来大学
fmp (音楽制作者連盟)
キャノン株式会社
アットネットホーム株式会社

 
 


中村伊知哉
(NAKAMURA, Ichiya)
 
NPO「CANVAS」副理事長
スタンフォード日本センター研究所長
MIT客員教授
 
1961年生まれ、京都市出身。 京都大学経済学部卒。 在学中はロックバンド“少年ナイフ”のディレクターなどを務める。 '84年、郵政省入省。電気通信局で通信自由化に従事した後、放送行政局でCATVや衛星ビジネスを担当。 登別郵便局長を経て、通信政策局でマルチメディア政策、インターネット政策を推進。 '93年からパリに駐在し、'95年に帰国後は官房総務課で規制緩和、省庁再編に従事。 '98年、郵政省を退官し渡米、MIT客員教授に就任。 NPO「CANVAS」副理事長、(株)CSK顧問、(社)音楽制作者連盟顧問、経済産業研究所上席研究員(2003年よりファカルティフェロー)、郵政研究所客員研究官、ビジネスモデル学会理事、AQUOS Museum館長、CAMP(子供芸術博物館公園)特別顧問。
 2002年9月からスタンフォード日本センター研究所長を兼務。
著書に『インターネット、自由を我等に』(アスキー出版局)など。


ホームページ:http://www.ichiya.org

 
 


 インターネットミュージアムは、CANVAS副理事長の中村伊知哉さんにインタビューを行いました!CANVASの誕生から、ご苦労話、またCANVASのこれからについてなど、さまざまなお話を伺いました。

 -まず、CANVASの成り立ちについてお伺いします。
 1998年に、米国ボストンのMITでジュニアサミットが開催され、コンピュータとこどもの関わり、学習、遊びなどさまざまな分野の研究を進めていくという世界的な話し合いが行われました。このジュニアサミットをきっかけに、こうした活動を日本で先進的に実践する機関として京都のけいはんな地区にCAMPという施設が設立されました。CAMPは、こどもたちのためのワークショップに特化したセンターで、MITメディアラボやレゴ、各国のこども博物館などが協力し、 株式会社CSKが運営しています。CAMPでは、MITで開発された「クリケット」と言われるロボットを使ったワークショップや、米国キャピタル・チルドレンズ・ミュージアムと協力し、粘土を使ったアニメーションを作るクレイアニメーションのワークショップ、また、新しい楽器や音楽を自分たちで創っていく音楽ワークショップなど、さまざまなワークショップが開催されています。そして、日本では、こうしたCAMPのようなワークショップを積極的に開催する動きや、こどもとコンピューターを学習の要素として取り入れたいという教育現場の声 を各地で耳にするようになりました。
 CAMPのような活動を日本全体に広めたい、各地でばらばらになっている活動をつなげたい、そういう思いがあったのですが、一民間企業によって運営されるCAMPの活動を日本全国に広げる には限界があります。また、こどもとデジタルとの関わりや学習については、本来は国が政策として考えなければならない事だと思いますが、これも実際にはなかなか難しい。こうした動きを集約し推進する場としてCANVASは生まれました。昨年6月より活動を始め、政府やマルチメディア振興センターの協力を得て、昨年11月NPOとして設立しました。
 インターネットは情報ハイウェイとも言われ、今までは情報が通る道として捉えられていた。しかし今は、情報の広場、情報が集まる、というところに価値があると思います。これまでインターネットは単に話を聞きにいく教会であったかもしれません。そこからみんなが店を出すバザーにどう変えていくのか、そのための場としてCANVASは作られました。

 -CANVASの活動はどのようなものですか?
  CANVASは、ワークショップの開発、普及・啓発、調査を行うことを目的としています。ワークショップをパッケージ化し、学校教育プログラムへ組み込むことも考えています。また、自治体や企業でのニーズを調査し、それをもとに全国へ普及する活動を行いたいと思っています。これは、政府のe-Japan戦略に沿った活動です。CANVASは、みんなが情報発信を行い、表現大国になることを目指しています。
 世界の中の日本のイメージというと、少し前までは、トヨタやホンダ、ソニーでした。戦う企業としてのイメージ、そして製造業が日本の強みでした。しかし、今の日本のイメージを世界のこどもたちに聞くと、ポケモンやドラゴンボール 、アイボになるでしょう。90年代は、「失われた10年」と言われます。経済発展が下向きになり、元気がなくなったと言われますが、実はこの10年の間に、マンガやアニメ、ゲームなどの分野で日本が競争力を持ち、日本独自の表現、コミュニケーションを発信しはじめた時代と言えるかもしれません。
 今、こどもたちにとって、携帯電話によるコミュニケーションはあたりまえになっています。そして、マンガやアニメ、ゲームなど日本に溢れる独自の分野で養われたこどもたちの表現力は、素晴らしいものがあります。例えば、クレイアニメーションのワークショップを行ったりすると、日本のこどもたちは優れた表現能力を発揮します。CANVASは、そうした創造力をうまく育てる場、発信する場を作っていくとともに、ポップカルチャーを含めた研究活動も行っていきたいと思っています。
    
 -CAMPやCANVASは、面白いワークショップをたくさん開催されていますね。
 
CAMPでは、昨年シンガポールのサイエンスセンターとネットワークで結び、オンラインを使ったロボット体験ゲームを行いました。また、「デジキャンプ」というプロジェクトでは、世界のこどもたちの一日の動きを写真で表現してもらい、ネットワークを使って世界中とコミュニケーションを行うというワークショップを開催しました。
 CANVASは、昨年11月に岡山マルチメディア祭りで2つのワークショップを開催しています。ひとつは、ロボット作りのワークショップ。MITが開発した「クリケット」というコンピュータを使って、紙や布などをはりつけ、プログラミングをして自分だけのロボットを創ってみよう、というワークショップです。もう一つは、カメラワークショップです。こどもたちがデジカメを使って写真を撮り、ネットワーク上で作品を発表します。誰もが情報を発信できるというワークショップです。

 -こどもたちの創造力を高めるものとして、ワークショップという形式を選ばれているのはどうしてですか?
 ワークショップは、手法の一つです。こどもたちの創造力を発揮させる場、参加して、表現する場として、ワークショップタイプは効率的で効果的です。

-これから実現したいと思われているワークショップはありますか?
 やってみたいワークショップはたくさんあります。例えば、 本づくりワークショップ。アイルランドのこども博物館と共同して行うものですが、同じテーマでこどもたちに本を作らせて、それぞれを比較します。どこがどう違うのか、なぜ違うのかといったことをこどもたちに考えさせるワークショップです。それから、日本独自のワークショップ。これも是非 実現したいと思っています。ゲームやマンガのワークショップ。お茶やお花、殺陣(たて)など。自分なりの発想で独自のスタイルのお茶やお花などを創っていくというものです。 どつき漫才も面白いですね。どついてコミュニケーションをとる、というのは日本特有の表現です。そうした独自のコミュニケーションを見せる、世界に発信するといったことをやっていきたいです。

 -デジタル技術やメディアによって表現やコミュニケーションの世界は広がったと思われますか?
  デジタルは表現手法としてまだまだでしょう。表現するという点では、クレヨンの方がよっぽど優れているのではないでしょうか。でも、デジタルはこれから発展する可能性はありますし、うまく使 っていけば良いと思います。また、世界をつなぐ、という点においてはデジタルは非常に有効です。CANVASのワークショップでは、アナログもデジタルも両方を表現ツールとして使ってい きたいと思っています。例えば、先ほど本づくりワークショップの話がでましたが、僕はこうした本づくりは紙をすくところから始めたいと思っています。

 -ご苦労されている点はどのようなところでしょう?
 ワークショップには正解がない。ベストがない。そのため、やってみて明確な効果が見えない、という部分が難しいところです。CANVASは、国全体の底上げを はかるという目的で活動していますが、それが数字として5%あがった、とか、ワークショップ の開催によってこどもたちの表現能力が向上したとか、小学校でワークショップの開催が増えた、といった効果を正確にはかる事はなかなかできません。そういう意味では、フェローの方々による目標の長さ、ということに支えられている部分があります。でも、やはりこうした活動は今やらなきゃいけない、と思いますし、気持ちのある人がどんどん走っていく!という形で動いていきたいと思っています。

 -これからのCANVASと、CANVASが目指すものについて教えてください。   
 CANVASは4年限定のプロジェクトです。実質の活動はあと3年。その間に、CANVASが行っているようなこどもたちのための活動が日本全国に広がり、自主的に運営されてい く、というのが理想です。CANVASがなくなっても、そうした「場」は残したい。
 ワークショップを開催するには、今はまだ専門家の手を借りなければ行いづらいというのが現状ですが、その敷居を下げたい、と思っています。 例えば、今年、CANVASでは小児科の先生方と、喘息をもつこどもたちのためのワークショップを開催しました。これは、こどもたちが上野動物園でビデオカメラによる撮影を行い、ビデオクリップを制作するというワークショップです。こうしたワークショップなども、CAMPのような ワークショップの専門家が行うのではなく 、小児科の先生方がストーリーを考えるところから始められるように、全体の底上げをはかる普及活動を進めたいと思っています。

 -素晴らしい活動ですね。インターネットミュージアムは今後もCANVASの活動についてご紹介させていただきたいと思います。本日はお忙しい中、本当にありがとうございました。


(取材:インターネットミュージアム)
 
このページはCANVASのご協力のもと、インターネットミュージアムにより制作されております。
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