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兵庫県立美術館 特別展「怖い絵」展

撮影・文 [エリアレポーター]白川瑞穂 / 2017年7月21日


怪談にお化け屋敷、絶叫マシーン・・・怖いものはお好きですか?
暑い夏につきものの恐怖感。怖いもの見たさもありで、ヒヤっとしたスリルを味わいたい、と思うのは、怖いのが苦手な私も同じです。

兵庫県立美術館で開催中の「怖い絵」展は、ドイツ文学者・中野京子氏のベストセラー本に想を得た展覧会。
ビジュアルの怖さだけでなく、描かれているストーリーの恐ろしさ、背景に潜む恐怖など、様々な意味での「怖い絵」約80点が、中野氏がシリーズで取り上げた作品を筆頭に、近世から近代にかけてのヨーロッパ各国で描かれた「恐怖」を主題とする膨大な絵画の中から選び抜かれています。



本の中には、「見てすぐ怖い」残酷なシーンを描いた絵なども多数含まれているのですが、安心してください。見られますよ。この展覧会では、残酷すぎるものは入っていません。

むしろ、分かりやすく怖いものを描いた作品より、絵の全体を見て、解説を読んで、ジワジワと迫る怖さがある作品の方が「本当に怖い」と感じました。
ネタバレにならない程度に、ご紹介したいと思います。

こちらは、古代ギリシャの叙事詩『オデュッセイア』に出てくる魔女、キルケ―が、英雄オデュッセウスに杯の盃を差し出している場面を描いた作品。


ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス《オデュッセウスに杯を差し出すキルケ―》1891年 油彩・カンヴァス オールダム美術館 ©Image courtesy of Gallery Oldham

とても綺麗で魅惑的なキルケ―。ポーズも構図も美しいし、これが怖い絵?
彼女の周りを見てください。周りの豚たちは、彼女のペット?それとも家畜?
実は、オデュッセウスよりも先にやって来て、酒を飲み、彼女に豚に変えられてしまった部下たちなのです。
自信満々なキルケ―の後ろの鏡に映る、追いつめられたオデュッセウスの運命は・・・?
「女性の誘惑」もまた、この世の恐怖のひとつ、という意味も込められているそうですよ。

エントランス1階には、オデュッセウスになって写真が撮れるフォトスポットもありますので、ぜひ!



今回、私が個人的に一番怖いと思ったのが、マックス・クリンガーの版画シリーズ『手袋』。


マックス・クリンガー『手袋』より《行為》1881年 エッチング・紙 兵庫県立美術館/町田市立国際版画美術館

女性がスケートリンクで落とした手袋を拾う主人公の男性。
彼はその手袋を持ち帰り、想像なのか、夢なのか、妄想をふくらませていきます。


(上から)マックス・クリンガー『手袋』より《凱旋》1881年 エッチング・紙 兵庫県立美術館 / マックス・クリンガー『手袋』より《敬意》1881年 エッチング・紙 兵庫県立美術館

手袋は、馬車に乗って旅をし、ある時は海で遭難しかけるところを主人公に救助され、装飾的な台に祭り上げられ・・・
フェティシズムと同時に、ストーカー的な発想、いえ、それを遥かに超える妄想っぷりが怖すぎます。

そして最後の絵が暗示する、この恋の結末は?
実際に作品を見て、想像してみてください。

メインビジュアルにもなっている、ロンドン・ナショナル・ギャラリーの至宝、《レディ・ジェーン・グレイの処刑》は最後の章に展示されています。


ポール・ドラローシュ《レディ・ジェーン・グレイの処刑》1833年 油彩・カンヴァス ロンドン・ナショナル・ギャラリー Paul Delaroche, The Execution of Lady Jane Grey, © The National Gallery, London. Bequeathed by the Second Lord Cheylesmore, 1902

暗い絵の中央に座り込む、全身白い衣装の若い女性。
目隠しをしているようですが、いったい何が始まるのでしょうか。
彼女の目の前の木の台は何でしょう?
画面左には、今にも卒倒しそうな侍女らしい女性。右側の男性の左手には斧が握られています。
主人公の女性は、王位についてわずか9日でその座を追われた16歳の女王、ジェーン・グレイ。
自分の身に起きたことを把握しきれないままに、この場にいるのかもしれません。
静かに進行しつつある処刑の場面。
この直後、確実に起きることを想像し、恐怖を感じずにはいられない作品です。

この展覧会は、会期が夏休み中ということもあり、お子様連れのご家族や、普段あまり美術館に来る機会がないという方など、幅広い層の方に楽しんでいただけるような工夫がたくさんされています。

展示作品が6つの恐怖のカテゴリーに分けられているのですが、特別監修者・中野氏によるわかりやすい解説や、担当学芸員の方渾身のユーモアとウィットにあふれた作品のキャッチコピーも必見です!怖い中にも、クスっと笑える楽しさが味わえますよ。

またミュージアムグッズも、デザインがクールで素敵な品揃え!
バスソルトやハーブティー、アクセサリー、飾れるノートなど、プレゼントでも自分用でも欲しくなるものばかりでした。



作品を見ながら、ひとりでじっくりと、恐怖の思いを募らせるのも、観た後にみんなでそれぞれが想像したことを話すのも楽しく、どなたでも楽しめる展覧会です。
夏休みの思い出に、訪れてみてはいかがでしょうか。

会場兵庫県立美術館
開催期間2017年7月22日(土)~9月18日(月)
休館日月曜日 ※ただし、9月18日(月・祝)は開館
開館時間10:00 ~18:00、金曜日、土曜日は20:00まで(入場は閉館の30分前まで)
所在地兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1[HAT神戸内]
078-262-0901(兵庫県立美術館 代表)
HP : http://www.artm.pref.hyogo.jp
料金一般 1,400円、大学生 1,000円、70歳以上 700円、高校生以下は無料
展覧会詳細へ 特別展「怖い絵」展 詳細情報
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白川瑞穂 白川瑞穂
関西在住の会社員です。学生の頃から美術鑑賞が趣味で、関西を中心に、色々なジャンルのミュージアムに出かけています。観た展示を一般人目線でお伝えしていきます。

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