ピピロッティ・リストは、1962年スイス ラインヴァレー、グラプスに生まれ現在チューリッヒ在住。今日の美術界において最も突出した活躍を続けるアーティストの一人です。当初ミュージックバンドのステージデザインを手がけていましたが1980年代後半からMTV世代を代表する印象的な音楽と映像を融合したストーリー性のある、また夢見るようなビデオ・インスタレーション作品の制作を始めます。色彩あふれる創造性や劇場的なセッティング、リズミカルな編集により新しい映像表現の可能性を創出したリストの作品は、身体と精神面の双方における探求が図られることで、私たちの身体や感覚、習慣、タブーといったものに対する挑戦や探索を示し、詩的にまた時には親密感をともないかつユーモアに満ちています。
1997年ベネチア・ビエンナーレではPremio2000(若手作家賞)を受賞し、以後も様々な国際展への参加や世界各国での個展が相次いでいますが、昨年秋、意外にも日本の美術館では初となる個展「ピピロッティ・リストからから」が原美術館(東京)で開催され好評を博しました。
「最も美しい美術館建設を設計する」と評される谷口吉生によりデザインされた丸亀市猪熊弦一郎現代美術館の3F展示室の空間にいかに展示されるかが必見ですが、それとともに表現された映像内容はもちろんのこと、ビデオ・インスタレーションとして考え抜かれた展示方法を鑑賞することで、鑑賞者はその身体の在り方や展示の空間の広がりを認識することができるでしょう。