20世紀を代表する画家のひとり、バーネット・ニューマン(1905-70)。ジャクソン・ポロック、マーク・ロスコらとともにアメリカ抽象表現主義の中心的存在として並び称されるニューマンですが、彼が真に追い求めたものは、神話を欠いた現代社会においていかに崇高な芸術を創造していけるのかという課題でした。8年の歳月を費やして描き上げられたニューマン後期の連作《十字架の道行き》および《存在せよⅡ》は、まさにその結晶と呼ぶべき傑作です。それら15枚のキャンヴァスに囲まれるとき、動乱の20世紀を果敢に生きぬいたニューマンから21世紀の私たちへのメッセージがきっと聞こえてくるでしょう。2015年春、このワシントン・ナショナル・ギャラリーの名宝が奇跡的に日本で公開されることになりました。この企画は、同館とMIHO MUSEUMの設計がともに世界的な建築家I・M・ペイの手によるという繋がりから、実現の運びとなったものです。
本展覧会は、1966年ニューヨークで大反響を呼んだグッゲンハイム美術館における「十字架の道行き」展から半世紀を経てのリバイバル展ともなりますが、古代の聖なる美術品を擁するMIHO MUSEUMでの展示は、この名作の真価を明かす、極めて画期的な企画といえましょう。