パブロ・ピカソは、20世紀の西洋美術史上、最も華々しく活躍した芸術家の一人と言えるでしょう。本展では、巨匠ピカソの魅力を多角的に紹介すべく、主にドイツのルートヴィヒ美術館より、油彩、ブロンズ、版画、陶器等の様々な作品を紹介します。
ピカソは1881年にスペイン南部のマラガで生まれました。1895年からバルセロナやマドリードで修行を積んだ後、1904年にパリのモンマルトルにあった芸術家が集うアトリエ兼住居「洗濯船」に移住しました。故郷スペインへの愛情を常に意識しながらも、第一次世界大戦と第二次世界大戦の最中もフランスに住み続け、1973年にフランス南部のムージャンで亡くなりました。生涯を通じて尽きることのない想像力と探究心を持ち続け、「青の時代」、「バラ色の時代」、そして「キュビスムの時代」、「新古典主義の時代」など様々な作風を展開しました。また大変多作な作家でもあり、油彩や素描の他に、版画、彫刻、陶器など数万点にものぼる作品を制作し、さらにバレエの舞台美術や衣装を手がけるなど、ジャンルを越えた旺盛な制作活動を行いました。
本展で出品するピカソ作品は、主にルートヴィヒ美術館のコレクションの中から選ばれたものです。ルートヴィヒ美術館は、ドイツのケルン市にある近現代美術を集めた美術館で、有名なケルン大聖堂に隣接しています。美術館名にもなっている「ルートヴィヒ」とは、ペーターとイレーネ・ルートヴィヒ夫妻のことで、ライン地方の著名な実業家です。ルートヴィヒ夫妻は芸術に造詣が深く、夫ペーターはピカソに関する論文で博士号を取得し、妻のイレーネも夫と共に美術史を学んでいました。夫妻は何十年もかけて900点ほどの広範なピカソ・コレクションを形成し、ケルン市のヴァルラフ=リヒャルツ美術館に、1969年より継続的に作品の寄託・寄贈を行いました。そして1976年にこの美術館の近現代美術部門が独立し、ルートヴィヒ美術館となりました。
ルートヴィヒ美術館のピカソ・コレクションは、世界でも最大級と言えるほど充実しています。所蔵点数としては、バルセロナとパリにあるピカソ美術館に次いで世界第3位を誇っており、個人のコレクターが収集したコレクションとしては、世界第1位の規模です。
本展では、ルートヴィヒ美術館所蔵のピカソの油彩、ブロンズ、版画、陶器等を約60点展示するほか、国内美術館が所蔵するピカソ作品や、マン・レイなど著名な写真家によるピカソの肖像写真約40点を展示し、天才と謳われるピカソの魅力を多角的に紹介します。