ベテラン作家と若手作家とが出会い,互いに触発し合うことで,現代美術が抱えるている問題や,社会に対してできることを浮き彫りにすることをテーマとした展覧会NEW INCUBATION.本展は,出展するアーティストにとっても,鑑賞者にとっても,刺激に富んだ挑戦の場となることを目指しています.今回は,映像作品を中心に幅広い活動を展開している二人のアーティストEUGENE KANGAWAとPIERRE JEAN GILOUXによる展覧会を開催します.
KANGAWAとGILOUXは,個人の内面ではなく外的事象を制作の出発点とし,異なる領域との協業や,アートと社会のあいだの境界を越えた活動に積極的に関与してきました.しかし,対象へのコミットメントの態度,アーティストとしての主体性のあり方は対照的です.冷静なまなざしで世界を捉え,脚本あるいは設定のみをつくりだすような「最小限の介入」によって,純度の高い作品を結実させるKANGAWA.自らのつくりだすCGの虚構に幻惑されているかのようにイメージに対して「最大限の介入」を行い,想像力とユーモアにあふれたヴィジョンをつくりだすGILOUX.今回はそれぞれの視点から現代の風景を描き出した映像作品を展示します.
両者の映像作品からは,それぞれがどのように世界を見て,どのように理解し,どのように再構成したのかが浮かび上がってきます.自然風景が現実以上の強度で切り取られ,秩序正しく作り込まれたKANGAWAの映像は,むしろフィクションに接近していっているように見えます.その一方で,GILOUXがデジタル画像処理によって再構築した虚構の都市は,生物のように有機的に変容していく現実の都市の姿を神秘的に表現しています.それぞれの手法で制作された作品は互いに鋭いコントラストを成しながらも,創作と実写が反転しながら接続される関係にあるように思えます.また,いずれの映像もどこか予兆的で,現代の世界に対するカウンターイメージとしても機能しています.
KANGAWAとGILOUXの作品に垣間見える二人の世界観のパラレルな関係,本展の関連企画としてパラレルに開催される期間限定の特別インスタレーション,そして,両作家の目を通して見る世界と私たちが体験する世界の並行関係.本展では,異なるレベルの「パラレルワールド」が重層的に繰り広げられます.
【パラレルイベント/ニュイ・ブランシュKYOTO2015関連企画】
1. EUGENE KANGAWA
Special Installation
日時:10月3日(土)18:00-22:00、4日(日)10:00-13:00/18:00-22:00、5日(月)10:00-17:00
会場:フリースペース
2. PIERRE JEAN GILOUX
a. Film Screening
日時:10月3日(土)夕刻
会場:京都国際マンガミュージアム(中京区)
b. Special Installation
日時:10月3日(土)-9日(金)10:00-20:00
会場:和室「明倫」