この度、当館ではビュランという道具で銅板を直に彫っていくエングレーヴィングという技法を用いて、独自の表現を確立した小林ドンゲの作品を中心にご紹介いたします。
小林は1926(大正15)年、東京都に生まれ、現在は千葉県印西市に在住(1986年より)する作家です。当初、画家を目指していた小林は1949(昭和24)年、上野の森美術館でルシアン・クートオ(Lucien Coutaud|画家|1904-1977)の銅版画を観たことから関心を持ち、関野準一郎(版画家|1914-1988)が杉並区の自宅を開放して行っていた銅版画研究会(通称:火葬町銅版画研究所)において、エッチングやアクアチントを関野や駒井哲郎(版画家|1920-1976)から教わります。小林は文学や能への造詣が深く、堀口大學(詩人、仏文学者|1892-1981)から詩集の挿絵や装幀を託されるなど、その仕事は早くから高い評価を受けていました。
本展では、小林が銅版画を学び始めた最初期の作品を中心に展示、作家が人生を通して追求してきた銅版画表現の魅力をお伝えいたします。その稀有なる作品をお楽しみください。尚、本展では小林と共に戦後版画を代表する作家として浜口陽三(1909-2000)、深沢幸雄(1924-2017)、池田満寿夫(1934-1997)の作品と、深沢に銅版画を学んだ夭折の作家・清原啓子(1955-1987)の作品をあわせて展示いたします。