この世界の断片をひろい集めるという営みは、古今東西、いつでもどこでもありました。 他人にとっては「無意味」「無駄」と思われることでも、心ひかれる何かのことなら、どんなことでも知りたいし手に入れたいという好奇心に導かれ、あれこれどこまでも集めてしまったという経験は誰にでもあるのではないでしょうか。なぜそんなことをしているのか、自分でもよくわからない。ただ、自分にとって未知なる何かにふれることや愛好するものにかこまれて暮らすことの愉楽は、それだけで他の何ものにも代えがたい私たちの生きる糧である、ということは言えるのかもしれません。
本展は、自分の身のまわりにある様々なものやできごとを集めることから生み出される多様な表現をご紹介するものです。それぞれの「眼鏡」を透かして世界の混沌に投げかけられるきめ細かなまなざしは、見えているはずなのに視ていない物、聞こえるはずなのに聴いていない声、そこに在るのに無いものにされることにも等しく光を当てることで、それら小さな存在を忘却から救い出し、それまで知っていたのとは別の世界の姿を異なる解像度で多面的に私たちへ示してくれるでしょう。
知れば知るほど、わからなくなる。世界は広い。本展が、そんな途方もなさを感じ取ることのできる場となりますように。