東寺の広い境内の西側に築地塀でかこまれた区画があります。この区画は西院(さいいん)と呼ばれ、中心に建っているのが御影堂(みえどう)です。もとは弘法大師空海の住房であったと伝えられ、現在は屋根の葺き替え工事を行っています。
鎌倉時代になると、仏師運慶の子康勝が、弘法大師坐像を造り、延応二年(1240)三月二十一日、北面に安置されました。これを機に、毎月二十一日の御影供(みえく)や毎朝の生身供(しょうじんく)は、御影堂においてはじめられ、東寺は弘法大師信仰を中心とした寺院へと生まれかわりました。
以後、南北朝時代にかけて、仏像や経典類、仏画、空海ゆかりの品など、多くの宝物が寄進されました。戦国時代になると、50年ごとに弘法大師遠忌の大法要が行われるようになり、これにあわせて、御影堂の屋根葺き替え修理などが何度も行われました。また、昭和九年(1934)の弘法大師1100年遠忌に際しては、東京・京都在住の旧女官によって、明治天皇や昭憲皇太后、大正天皇の遺品の寄進がみられました。
今回の特別展では、御影堂の歴史をたどりながら、東寺所蔵の宝物の中から御影堂に伝わった様々な宝物を選りすぐり展示します。この特別展を機に東寺千二百年の寺宝に触れていただければ幸いです。