展覧会は、ハプスブルク家を紹介するプロローグを経て、第1章は「拡大される世界」。15世紀半ばに幕を開けた大航海時代に続いて、ルドルフ2世の治世にあたる16世紀末から17世紀始めには、望遠鏡による天体観測もはじまりました。
皇帝にも関わらず、現実逃避の傾向があったルドルフ2世。首都をウィーンからプラハに移転し、争いから離れた地で芸術と科学への興味を深めていきます。
プロローグ「ルドルフ2世とプラハ」、第1章「拡大される世界」生涯独身で、旅行にも出なかったルドルフ2世。生きた動物を集めたプライベートの動物園も持っていました。
ルーラント・サーフェリーは、宮廷のお抱え画家の一人。多くの動物にあふれた独特のスタイルを確立しました。
花卉画(花の静物画)にも優れた才能を発揮したサーフェリー。ヤン・ブリューゲル(父)も花を得意とし、両者はネーデルラントにおける花の静物画の先駆者とされています。
第2章「収集される世界」展覧会メインビジュアルは、ジュゼッペ・アルチンボルド《ウェルトゥムヌスとしての皇帝ルドルフ2世像》。会場ではルドルフ2世の肖像画と並べて展示されています。
ウェルトゥムヌスは、古代の創造神・四季の司祭・変身の神です。単なる奇異な肖像画ではなく、皇帝を万物の司神になぞらえた、権威付けとしての絵画ともいえます。
バルトロメウス・スプランガーは、エロティックな神話画の名手です。大きな作品で目を引くディルク・ド・クワード・ファン・ラーフェステインの《ルドルフ2世の治世の寓意》は、ルドルフ2世から直接発注されて描いた作品とされています。
第3章「変容する世界」ヨーロッパの他の王侯貴族と同様に、収集したコレクションを「驚異の部屋」(独語でヴンダーカンマー:博物陳列室、またはクンストカンマー:美術品陳列室)に納めたルドルフ2世。美しいもの・奇妙なものを求め、ヨーロッパ随一のプライベートミュージアムになりました。
エピローグでは、様々な鉱物、華麗な工芸品や、観測機器などが展示されています。
エピローグ「驚異の部屋」会場最後には現代美術家のフィリップ・ハースが手掛けた、アルチンボルド《四季》シリーズの立体模型も。このコーナーは撮影可能です。
展覧会は福岡市博物館から始まった巡回展。東京展の後は、3月21日(水)~5月27日(日)に佐川美術館(滋賀)で開催されます。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2018年1月10日 ]■ルドルフ2世の驚異の世界展 に関するツイート