一昨年の開催は、震災によって会期半ばで中断となった「三井家のおひなさま」。贅をつくしたひな人形・ひな道具が、江戸時代にはひな人形の市が立ったという日本橋の地に戻ってきました。
まず目に入るのは、幅3メートル、高さ5段の豪華なひな段飾り。北三井家十一代・高公の一人娘、浅野久子氏の旧蔵品です。久子氏が誕生した翌年の初節句に際し、江戸時代から続く京都の人形師・丸平(まるへい)こと、五世大木平藏に造らせました。
近年まで浅野家でおこなわれていた段飾りを再現した展示です。
展示室4北三井家十一代・高公(たかきみ)夫人の鋹子(としこ)旧蔵のひな人形は、日本橋十軒店の名工・二代永德齋製のものが中心です。
ひな道具には、牡丹唐草の蒔絵装飾。小さいながらも、華麗な装飾に目を奪われます。
鋹子(としこ)旧蔵のひな人形さらに小さなひな飾りは、伊皿子三井家九代高長(たかひさ)夫人・興子(おきこ)旧蔵の銀製雛道具。1cmほどのものまであります。
銀製のひな道具は類例が少なく、公家の近衛家、大名の鍋島家、和菓子屋の虎屋の所蔵品などが知られています。虎屋の所蔵品は、2011年の根津美術館での展覧会
「虎屋のお雛様」で紹介されていました。
極小の銀製雛道具は、興子(おきこ)旧蔵展示室7では特別展示「酒のうつわ」も同時開催されています。
桃山時代から装飾が豊かになり、江戸時代に入ると一気に多様化した酒の器。漆器、金属器、陶磁器など、様々な酒の器が並びます。
特別展示「酒のうつわ」小コーナーながら、日本画好きなら見逃せないのは展示室6。水野年方(としかた)による美しい版画「三井好 都のにしき」が紹介されています(展示替えがあります)。
明治末期の版画で、肉筆画と見まごうような美しさ。三井呉服店が発表した新作ファッションカタログとして作られたもので、広告も兼ねていました。
水野年方は月岡芳年の門人。弟子には鏑木清方がおり、歌川国芳の流れを継ぐ重要人物です。(取材:2013年2月7日)
水野年方筆「三井好 都のにしき」