本職は大名でありながら、プロ並みの実力を持つ茶人「大名茶人」。その代表格といえるのが小堀遠州(1579~1647)と松平不昧(1751~1818)です。
根津美術館の数多いコレクションの中でも、遠州、不昧ゆかりの茶道具は柱のひとつ。本展では重要文化財、重要美術品を含む多くの名品が出品されています。
会場建築や造園でも知られている小堀遠州は、古田織部に茶の湯を学び、徳川家光の茶道指南役となりました。遠州の好みは「綺麗さび」と称され、その優れた審美眼で多くの茶道具を世に送り出しました。
遠州が愛した茶入のひとつが、≪丸壺茶入 銘 相坂 瀬戸≫です。古今和歌集で詠まれた和歌「相坂の嵐のかぜはさむけれど ゆくへしらねばわびつつぞぬる」から「相坂」の銘となりました。会場には経緯が記された添状も展示されています。
≪丸壺茶入 銘 相坂 瀬戸≫松平不昧は、江戸時代後期の松江藩主。小堀遠州から150年ほど後の大名茶人です。遠州が見立てた茶道具を愛し、自ら編纂した茶道具の名物集「古今名物類聚」で、遠州が見出して銘をつけた茶入を「中興名物」と定めました。
生涯で800点以上もの道具を収集したといわれている松平不昧。≪大井戸茶碗 銘 三芳野≫は、不昧の所蔵品目録「雲州蔵帳」にも記されている雅な名碗です。
≪大井戸茶碗 銘 三芳野≫などが並ぶ本展は展示室1のみで開催ですが、同時開催のテーマ展示もなかなかの充実ぶりです。展示室2の「大雅と良寛の書」で、文人画家として名高い池大雅と、昔話などで知られる‘良寛さん’の作品を中心に、江戸時代後期の13人の書を展示。Bunkamuraでの展覧会が話題となった白隠の書もあります。
展示室5の「お雛さま -旧竹田宮家寄贈品-」は、寄贈を記念して2011年2月末に展示されましたが、同展は震災のため2週間で中断。明治天皇皇后両陛下より第6皇女常宮昌子内親王が拝領した雛人形と雛道具が、待望の再公開となりました。展示室6は「花見月の茶」です。
展示室5の「お雛さま -旧竹田宮家寄贈品-」少し敷居が高いように思われる茶道具の展示も、解説を聞くと理解度がぐっと高まります。本展も、特別講演会やギャラリーツアーの予定も多数ありますので、
根津美術館の公式サイトでご確認ください。(取材:2013年2月22日)