江戸時代の遺跡の発掘調査では、考古資料とともに人骨やミイラが見つかることもあります。実は、
国立科学博物館ではこれらの人骨やミイラを調査・保管しており、現在では6,000個体を超える一大コレクションになっていることは、あまり知られていないでしょう。
このコレクションに科学的な調査を行った結果、判明したことを紹介する本展。「知っているようで知らない」大江戸の人たちの姿が浮かび上がります。
なお「大江戸」とは、今の山手線の内側に隅田川東岸を足したぐらいのエリア。本展では、「大江戸」に生きていた人たちを中心とした資料を展示しています。
会場まず注目されるのは「大江戸の顔」。埋葬形式や副葬品などから生前の身分が推定できますが、その結果、武家と町人とでは顔つきがかなり異なっていたことが分かりました。
将軍や大名は極めて面長の顔。鼻は高くて幅が狭く、顎は華奢。これらは「貴族形質」といわれます。美人として描かれる浮世絵にも貴族形質を見ることができます。
武家の顔と町人の顔発掘されたお墓や遺骨からは、どのような環境で育ったか、どのような体格だったのかなど、さまざまなことが分かります。
こどもの頃から帯を強く締めすぎていた影響が考えられる、胸郭異常の骨。大江戸では梅毒が大流行しており、なんと50%もの人が感染していたとする説もあるほど。頭蓋骨に穴が開くまで至ったものまで見られます。
胸部異常は帯を強く締めすぎていた影響かつくばエクスプレスの南千住駅建設中に発見された約100個分の頭骨。うち40%には、刃物を真っ直ぐ突き刺した刀傷が見つかっており、刀や槍などの「試し突き」に使われたものと考えられています。
頭骨に残る大きな傷は、「試し突き」の跡「装う」という文化は、以前は身分が高い人のみに許された文化でしたが、江戸時代には一般の人まで普及しました。
「大江戸の装い」では江戸時代の人の服装、髪型、化粧の様式を紹介しています。
「大江戸の装い」「大江戸の装い」には「お歯黒の匂い」が体験できるコーナーもあります。2種の体験のうち、特に「お歯黒水」の匂いは何とも独特。大江戸の人たちは、この匂いがしていた街を歩いていたのかと思うと…。ぜひ会場でお確かめください。(取材:2013年4月8日)