IM
    レポート
    石田徹也展 ─ ノート、夢のしるし
    平塚市美術館 | 神奈川県
    底知れぬ沼、重量級の展覧会
    気鋭の画家として注目を集め出した矢先に、踏切事故のため31歳の若さでその生涯を閉じた石田徹也(1973-2005)。代表作約110点が平塚市美術館で紹介されています。
    (左)《燃料補給のような食事》
    1章 起点…「創作方法を探したい」 右上の《弱いものいじめは、やめよう!》は、石田徹也11歳、少学5年生の作品
    (左から)《めばえ》 / 《飛べなくなった人》
    (左から)《屋上へ逃げる人》 / 《使われなくなったビルの社員のイス》
    (左から)《捜索》 / 《前線》
    (左から)《彼方》 / 《訪問者》
    4章 ユーモア…「ナンセンスへと近づくことだ」
    (左から)《満潮》 / 《無題》
    (左から)《無題》 / 《無題》
    石田徹也は1973年、焼津市生まれ。小学生の時に第五福竜丸事件に関心を持ち、「ここが家だ ベン・シャーンの第五福竜丸」を通じて、社会派画家のベン・シャーンの影響を受けました(被曝した第五福竜丸は焼津の遠洋マグロ漁船です)。

    武蔵野美術大学在学中に、第6回グラフィック・アート「3.3㎡(ひとつぼ)展」でグランプリを獲得。コンビニの店員や警備員、工事現場の作業員などのアルバイトをしながら、作家活動を続けました。

    活動の初期は、社会と世相に翻弄される現代人をテーマにした作品が目立ちます。会場入口で展示されている《燃料補給のような食事》も、「食事というより燃料補給に近い」という牛丼屋からの連想です。

    本展では、初公開となる下絵も紹介されています。展覧会メインビジュアルの《飛べなくなった人》も、初期の段階でディテールまで構想が及んでいた事が分かります。


    1章 起点…「創作方法を探したい」、2章 漂う人…「現実の何かに光をあてる」

    会場は、ほぼ年代順の構成(4章を除く)。1章~2章の初期作品に続いて、3章は1998年から2001年頃までの作品です。この時期の作品から、現実生活に密着した場面が増え、明らかに石田本人に見える人物も登場するようになります。

    教室の生徒が顕微鏡と一体化した《めばえ》は、見ることと見られることをテーマにした作品。消防士が手を差し伸べる《無題》も、あまり救出されたくない雰囲気です。表情の乏しい人物と、時間が止まったような場面の奥に、底知れぬ沼が潜んでいるような作品が続きます。


    3章 変化「他人の自画像」

    4章はチャリティーのための作品や、本や雑誌の仕事など。石田は雑誌「Number」の挿絵を数年に渡って担当していたほか、大槻ケンヂの著作の表紙絵なども手がけていました。

    矢吹ジョーのように「真っ白な灰」になったキング・カズや、コックピットではなく側溝に収まっているF1レーサーなど。ユーモラスな絵画も、どこか重い印象が残ります。


    4章 ユーモア「ナンセンスへと近づくことだ」

    最後の5章は、2000年頃からの作品です。それまではイラストボードなどにアクリル絵の具で描いていましたが、キャンバス+油彩に変わっていきます。

    画材が変わった事で塗り重ねも増え、表現方法も重層的に。病院、薬、枯れ木、性器など、生と死を連想させるようなモチーフも多くなります。

    最期の作品は、机を前にした男性。逞しい腕の半袖姿ですが、その表情は思いつめたように見えます。卓上には白い紙が置かれていますが、何か描かれるはずだったのかどうかは分かりません。


    5章 再生「とにかく かく」

    海外のアートフェアにもしばしば出展するなど、積極的に作品を発表していた石田。没後のアトリエから未公開の作品が大量に見つかっており、展示の機会に左右される事なく、ただひたすらに作品を作り続けていました。

    どこか人を食ったような表現の中にも、絵に賭けた強い想いが溢れる作品の数々。都心近くとは言い難い平塚市美術館ですが、今年有数の充実感を覚えた、重量級の展覧会でした。

    本展は足利市立美術館からの巡回展。平塚の後は砺波市美術館(9月6日~10月5日)、静岡県立美術館(2015年1月24日~3月25日)と回ります。
    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年4月11日 ]

    石田徹也ノート

    石田 徹也 (著)

    求龍堂
    ¥ 3,240

     
    会場
    会期
    2014年4月12日(土)~6月15日(日)
    会期終了
    開館時間
    9:30~17:00(入館16:30迄)
    休館日
    月曜日休館 ただし5月5日は開館
    住所
    神奈川県平塚市西八幡1-3-3
    電話 0463-35-2111
    公式サイト http://www.city.hiratsuka.kanagawa.jp/art-muse/2014201.htm
    料金
    一般800(640)円、高大生500(400)円
    ※( )内は20名以上の団体料金。中学生以下、毎週土曜日の高校生は無料
    ※各種障がい者手帳の交付をうけた方と付添1名は無料
    ※65歳以上で、平塚市民の方は無料、市外在住の方は団体料金
    展覧会詳細 石田徹也展 ─ ノート、夢のしるし 詳細情報
    おすすめレポート
    学芸員募集
    大阪府立博物館 学芸員募集(考古・古代史) [大阪府立近つ飛鳥博物館 又は 大阪府立弥生文化博物館]
    大阪府
    【公益財団法人ポーラ伝統文化振興財団】学芸員募集 [ポーラ伝統文化振興財団(品川区西五反田)141-0031 東京都品川区西五反田2-2-10 ポーラ五反田第二ビル]
    東京都
    丸沼芸術の森 運営スタッフ募集中! [丸沼芸術の森]
    埼玉県
    八尾市歴史民俗資料館 学芸員募集中! [八尾市歴史民俗資料館での学芸員職]
    大阪府
    観峰館 学芸員募集中! [観峰館]
    滋賀県
    展覧会ランキング
    1
    東京ドームシティ Gallery AaMo(ギャラリー アーモ) | 東京都
    逆境回顧録 大カイジ展
    開催中[あと44日]
    2024年3月16日(土)〜5月12日(日)
    2
    SOMPO美術館 | 東京都
    北欧の神秘 ― ノルウェー・スウェーデン・フィンランドの絵画
    開催中[あと72日]
    2024年3月23日(土)〜6月9日(日)
    3
    東京都美術館 | 東京都
    印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵
    もうすぐ終了[あと9日]
    2024年1月27日(土)〜4月7日(日)
    4
    東京国立近代美術館 | 東京都
    美術館の春まつり
    もうすぐ終了[あと9日]
    2024年3月15日(金)〜4月7日(日)
    5
    国立科学博物館 | 東京都
    特別展「大哺乳類展3-わけてつなげて大行進」
    開催中[あと79日]
    2024年3月16日(土)〜6月16日(日)