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    レポート
    3つの個性 ─ 表現の可能性を探る ─
    ホキ美術館 | 千葉県
    新作も含め、24点ずつ紹介
    写実絵画のみを展示するユニークな美術館として、2010年11月3日にオープンしたホキ美術館。開館時に約300点だった所蔵品はその後も続々と増え、現在では400点超の規模となりました。開館5周年の記念展は、ホキ美術館でも人気が高い3人の作品を紹介する企画。新作も含め、24点ずつが出展されています。
    島村信之《月光》2015年
    (左から)島村信之《ニジイロクワガタ ─ メタリック ─ 》2015年 / 島村信之《オオコノハムシ ─ 擬態 ─ 》2015年
    島村信之《浴》2009年
    (左)五味文彦《樹影が刻まれる時》2015年
    (左から)五味文彦《UTSUSEMI》2015年 / 五味文彦《青い器物のある静物》2005年
    (左から)五味文彦《パンと檸檬》2015年 / 五味文彦《林檎のある静物》2010年
    (左)大畑稔浩《気配 ─ 春》2015年
    (左から)大畑稔浩《五十歳の画家》2011年 / 大畑稔浩《早春(白い影)》2005年
    (左から)大畑稔浩《瀬戸内海の風景 ─ 川尻港》2015年 / 大畑稔浩《陸に上がった舟》2010年
    ギャラリー1を中心に行われている本展。まずは島村信之さん(1965-)からです。

    近年は甲殻類などの作品も手掛けている島村さん。本展でも昆虫を描いた作品も発表されていますが、やはり島村さんといえば美しい女性像。ここでは新作《月光》をご紹介します。

    光に照らされた白い女性像を描いてきた島村さんですが、本作は一転して黒っぽい画面。ただ島村さんによると「光に満たされる」も「黒に溶け込む」も表裏一体であり、ともに“いかに女性の肌を美しく表現するか”を追及した末の表現です。これまでの白い作品とあわせて、ご覧ください。


    島村信之さんの作品

    続いて、五味文彦(1953-)さん。ギャラリー1に入ってすぐの《樹影が刻まれる時》は、左側から右側に流れるような構成です。空間表現や存在感がある巨木は、琳派や狩野派などの日本画から着想したもの。綿密に描き込まれた葉について「もうしばらく葉っぱは描きたくない」と、ユーモア交じりに解説しました。

    もうひとつの新作《UTSUSEMI》は、ギャラリー3での展示。こちらは剝製の描き込みが見もので、毛の1本1本が奥からこちらに向かって生えている表現は、驚異的としか言いようがありません。ちなみにこの作品は、2016年のホキ美術館カレンダーでも使われています(11・12月)。


    五味文彦さんの作品

    3人目は大畑稔浩(1960-)さん。海や自然の作品に定評がある大畑さんの新作は《気配》シリーズ。2004年に引越してきた自邸の庭を描いたもので、春・夏・秋の3作が発表されました(冬は後日制作される予定です)。

    特徴的なのは、その描き方です。近寄って見ると、写実絵画にしては珍しいざらっとした質感に気が付きますが、これは現場で採取した葉や土などを粉にして絵具に混ぜたもの。まさに「本物」を付加する事によって、視覚的な現実を超えたリアルに近づこうとする試みです。

    絵画でありながら視覚的な表現だけに満足しない、大畑さんならではこだわりが現れています。


    大畑稔浩さんの作品

    企画展のご紹介はここまでですが、最後に森本草介さん(1937-2015)の作品にも触れたいと思います。写実絵画の第一人者だった森本草介さんですが、今年10月1日に78歳で他界されました。

    もともと絵に興味を持っていた株式会社ホギメディカル創業者の保木将夫さんが、写実絵画を集めるきっかけになったのが、森本草介さんの作品でした。1997年、保木さんは美術年鑑に掲載されていた森本さんの作品に魅せられて展覧会へ足を運び、その作品の素晴らしさに胸をうたれて購入を決意。以降、森本さんの作品をはじめ、他の作家による写実絵画までコレクションの幅を広げた事が、ホキ美術館の設立につながったのです。

    保木さんが最初に購入したのが、1998年に描かれた《横になるポーズ》。美術館の開館以降も森本作品の蒐集は進み、現在では36点を所有しています。


    森本草介さんの作品


    千葉市緑区の住宅街にあるホキ美術館。最寄はJR外房線の土気(とけ)駅ですが、東京駅から直通の快速なら乗車時間はぴったり1時間と、意外と近場。東京駅近辺から専用バスでホキ美術館までご案内するバスツアーなどもありますので、詳しくは公式サイトでご確認ください。
    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年11月19日 ]

    写実絵画とは何か? ホキ美術館名作55選で読み解く写実絵画とは何か? ホキ美術館名作55選で読み解く

    松井 文恵 (著), 安田茂美 (著), ホキ美術館 (監修)

    生活の友社
    ¥ 1,944


    ■ホキ美術館 3つの個性 に関するツイート


     
    会場
    会期
    2015年11月20日(金)~2016年5月15日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~17:30
    (入館は閉館の30分前まで)
    【レストラン】
    ランチ:11:30~14:30 ディナー:17:30~
    (月曜日はディナー休み。要予約)
    休館日
    火曜休館 火曜日が祝日の場合開館し、翌日休館
    住所
    千葉県千葉市緑区あすみが丘東3-15
    電話 043-205-1500
    公式サイト http://www.hoki-museum.jp/
    料金
    一般 1,800円/高校生・大学生・65歳以上 1,300円/中学生 900円/小学生以下無料(大人1人につき小学生2人まで)
    団体(10名以上) 1600円/1人(65歳以上:1300円/1人)/小学生団体 750円/1人(小学生10人に対して保護者の方が1人つく場合)
    展覧会詳細 3つの個性 ─ 表現の可能性を探る ─ 詳細情報
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