長寿や子宝、富や繁栄などを象徴するものとして、古くから愛されてきた吉祥画。展覧会ではラッキーアイテムを描いた作品とともに、見ている側が幸せな気分になる作品も含め、計71点(前後期あわせて)が紹介されます。
伊藤若冲の生誕300年も記念した本展。まずは若冲作品からご案内します。
ユニークな顔合わせによる取組を描いた《河豚と蛙の相撲図》から始まり、若冲の作品は計11点(うち5点は初公開です)。挿絵貼屏風《群鶏図》は、若冲が得意とした鶏を、水墨で描いた作品。墨の濃淡を活かした表現で、雌雄の鶏のさまざまな姿態を捉えました。
伊藤若冲の作品ハッピーの神様といえば、七福神。このコーナーでは若冲作品も4点ありますが、ここでは狩野一信をご紹介しましょう。
増上寺に納められている《五百羅漢図》でも知られる一信。《布袋唐子図》では楽しげな唐子と布袋をユーモラスに表現しました。
唐子の豊かな表情も見ものですが、どうしても目に入るのが布袋の腹まわり。腹毛のねちっこい描写は、狩野一信ならではといえます。
狩野一信《布袋唐子図》会場後半に登場するのは、珍しい真っ赤な掛軸。柴田是真による《円窓鐘馗》です。
山種美術館の所蔵ですが、同館では初公開となります。
作品は「くらしに息づく吉祥」コーナーでの紹介。魔を退ける鍾馗は、端午の節句の幟(のぼり)の絵として描かれました。
《円窓鐘馗》は円形の窓から鍾馗が覗き、思わず邪鬼が逃げ出すデザイン。抜群のセンスが光ります。
柴田是真《円窓鐘馗》山種美術館見ている方がハッピーな気持ちになる絵画としては、2月9日(火)の後期から歌川国芳の浮世絵《きん魚づくし ぼんぼん》と《其まゝ地口猫飼好五十三疋》も登場。こちらも楽しみです。
第二会場には、今年の干支である猿を描いた作品がずらり。干支も新年を寿ぐ縁起物としてしばしば用いられるモチーフです。
中央は松尾敏男の《手長猿》。現代の日本画界を代表する重鎮、本作は今年の山種美術館カレンダーの表紙にもなっています。
2016年の干支「猿」を描いた作品「若冲」の名前に反応する方が多いのでしょうか、いつにも増してお客様の出足は好調との事。特に週末は、若い人の姿も目立っているそうです。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年2月2日 ]■山種美術館 ゆかいな若冲・めでたい大観 に関するツイート