仏画や仏像など仏教美術を見る際に、まず目に入るのは、ほとけさま。ただ今回は、ほとけさまを「支えるもの」に着目していただきます。
実は、ほとけの名前や意味を知る手がかりとして「支えるもの」は、かなり重要。何によって支えられているか、何に乗っているかは、ほとけを知る上で大きなポイントとなります。
展示室1・2では、実際の作品で見ていきましょう。
《釈迦三尊像》で釈迦が座っているのは蓮華座。濁った泥から出て美しい花を咲かせる蓮華は、仏教を象徴する花です。脇侍が乗っているのは獅子と象なので、両者は文殊菩薩と普賢菩薩という事がわかります。
邪悪や邪教を象徴する鬼を踏みつけて立つのは、仏教の守護神である四天王。展示されている像は毘沙門天です。
「ほとけを支える」ヒンドゥー文化を取り入れて成立した密教。ほとけの種類が多い密教では、ほとけを識別する上で、尊像を支えるものの重要性はますます高くなります。
獅子があしらわれた鳥獣座(蓮台を動物の上に乗せたもの)に座るのは、密教の教主である大日如来。梵天や帝釈天など12尊の守護神に台座にも、動物が使われる例が見られます。
「密教のほとけを支える」本展の主役といえるのが、重要文化財《金剛界八十一尊曼荼羅》。天台密教の美しい彩色曼荼羅ですが、見ていただきたいのは、ほとけさまが座っている鳥獣座です。
中央の大日如来が座るのは、七頭の獅子が支える蓮華座。周囲の四尊の蓮華座には、有翼の象・有翼の馬・迦楼羅(かるら:伝説の巨鳥)・孔雀。さらに四尊が隣接する場所の如来や菩薩も、同じ種類の鳥獣座に座っています。台座の種類を見る事で、ほとけのグループが把握できます。
重要文化財《金剛界八十一尊曼荼羅》いつもと違った目線での、仏教美術鑑賞。新しい発見をお楽しみください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年9月13日 ]■根津美術館 ほとけを支える に関するツイート