古代アンデスといえば、ナスカの地上絵と、マチュ・ピチュで知られるインカ、一般的にはこのぐらいと思います。本展では9つの文化を紹介。日本ではあまり知られていなくとも、アンデス文化史では重要な位置を占める文化にも焦点を当てました。
アンデスに人類が到達したのは、紀元前1万3000年頃。カラル文化(紀元前3000年頃~前2000年頃)では、未焼成の土偶を使った儀式が行われていたようです。
紀元前1300年頃~前500年頃のペルー北部山岳地域で興ったのがチャビン文化。石彫の神像は、石造りの壮大な建造物がつくられた後の文化にも繋がります。
モチェ文化(紀元200年頃~750/800年頃)は、ユニークな彩色土器が見もの。ナスカ文化(紀元前200年頃~紀元650年頃)もほぼ同時期ですが、北と南に離れている事もあって、文化的には異なります。
序章「人類のアンデス到達とその後の生活」、1章「アンデスの神殿と宗教の始まり」、2章「複雑な社会の始まり」、3章「さまざまな地方文化の始まり」続いて、インカ帝国の基礎になった文化について。
ティティカカ湖周辺で発展したのが、高度な石造建築技術を持つティワナク文化(紀元500年頃~1100年頃)。ワリ文化(紀元650年頃~1000年頃)も同じ高地で共存。儀式で用いられたと見られる巨大な壺や鉢が目をひきます。
日本人考古学者の島田泉教授が発見したシカン文化(紀元800年頃~1375年頃)。優れた金属精錬技術から、黄金の装飾品が生み出されました。
4章「地域を超えた政治システムの始まり」アンデス文明の最後は、二つの勢力の覇権争い。北部ではシカンの衰退後にチムー王国(紀元1100年頃~1470年頃)が台頭。発展し続けたアンデスの先住民文化の頂点に達したのがインカ帝国(紀元15世紀前半~1572年)ですが、わずか168名のスペイン人の侵略によって崩壊してしまいました。
時代に沿った文化の紹介はここまでですが、最終章は古代アンデス文明の身体観について。長い間、旧大陸と隔絶されていたこの地には、独自の身体加工の風習が見られました。幼児期から人工的に行われる頭蓋変形、頭骨に穴を開ける頭蓋穿孔術、そして極端に乾燥した地域ゆえのミイラなど、私たちとはかなり異なる文化が見てとれます。
5章「最後の帝国―チムー王国とインカ帝国」、「6章「身体から見たアンデス文明」展覧会は、1994年に国立科学博物館で開催した「黄金の都シカン発掘展」以来、2012年「インカ帝国展‐マチュピチュ『発見』100年」まで5回の展覧会を開催してきた「TBSアンデス・プロジェクト」の集大成。かなり広範囲ですが、これさえ見れば古代アンデスの概略はバッチリです。
展覧会は全国巡回。東京展の後は2018年3月21日(水)~5月6日(日)に新潟県立万代島美術館は決定。その後も2019年9月まで各地を巡回する予定です。会場と会期は判明次第、
こちらでご案内いたします。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年10月20日 ]■古代アンデス文明展 に関するツイート