中国からもたらされ、ヨーロッパの王侯貴族を魅了した美しい磁器。欧州ではザクセン公国のマイセン製作所がいち早く磁器の生産に成功、後を追うようにフランスで創立されたのが、セーヴル磁器製作所です。
展覧会は時代ごとの構成で、第1章「18世紀のセーヴル」から。冒頭の《乳房のボウル(「ランブイエの酪農場のセルヴィス」より)》は、ルイ16世がマリー・アントワネットのためにつくらせた食器です。艶めかしいシルエットで「王妃の乳房の型でつくられた」とも伝わりますが、その説は誤りです。
もともとパリの東側にあった磁器製作所を、自らの邸館近くのセーヴルに移転させたのは、ポンパドゥール夫人。ルイ15世の愛妾だった彼女が好んだピンク色の釉は「ポンパドゥールのバラ色」と呼ばれています。
第1章「18世紀のセーヴル」第2章は「19世紀のセーヴル」。この時代のセーヴルに大きな影響を与えたのが、1800年に若干30歳で所長に任命されたアレクサンドル・ブロンニャールです。フランス革命の後、高級磁器は困難な時代を迎えていましたが、好奇心旺盛な彼は新しい技術やデザインを導入。学問的な知識も取り入れて、さまざまな作品を生み出しました。
またブロンニャールは、職人たちの着想の源とするために、世界各地の陶磁器・ガラス器を収集。このコレクションは、国立セーヴル陶磁美術館となり、今日まで引き継がれています。
第2章「19世紀のセーヴル」第3章は「20世紀のセーヴル」。1900年の万国博覧会では、アール・ヌーヴォーの作品を出品。優雅なテーブルセンターピース《スカーフダンス》は、当時流行していた振り付けから着想したもの。金賞を受賞し、批評家や観衆からも賞賛されました。
この時代には、セーヴル初の外国人滞在芸術家として、日本人の沼田一雅(1873-1954)が招かれました。沼田は日本の伝統的な女性や動物をモチーフとして提案し、東洋風の作品もつくられました。
第3章「20世紀のセーヴル」第4章「現代のセーヴル 1960-2016」。セーヴルは現在でも世界中の芸術家と協力し、多彩な作品を生み出しています。
日本人アーティーストとしては、草間彌生、デザインオフィスnendo(佐藤オオキ)、友禅の人間国宝・森口邦彦ら。大の相撲ファンだったシラク大統領(当時)が要請したトロフィーも、セーヴルによる製作です。
第4章「現代のセーヴル 1960-2016」華やかでありながら調和もとれた美しい色彩は、展覧会スペシャルナビゲーターの賀来千香子さんも絶賛していました(賀来さんは音声ガイドも担当しています)。第3章は写真撮影もできますので、インスタにもピッタリです。
本展は全国巡回で、東京の後は大阪・山口・静岡とまわります。
会場と会期はこちらです。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年11月21日 ]※掲載画像の作品はすべてセーヴル陶磁都市蔵
■フランス宮廷の磁器 に関するツイート