昨年は《バベルの塔》が来日して話題になったピーテル・ブリューゲル1世。ピーテル・ブリューゲル(父)と紹介される事もある事から、息子も画家なのは推測できますが、孫やひ孫まで続く画家一族とは、あまり知られていなかったと思います。
展覧会では、150年に渡って画家を輩出したブリューゲル一族の作品を中心に紹介。順路を追って、1フロアずつご紹介していきます。
1章は「宗教と道徳」。ヒエロニムス・ボスの影響を受け、「第二のボス」とも称されたピーテル1世。ただ、キリスト教的善悪の表現に終始したボスに比べ、より冷静に現実世界を観察した作品が目立ちます。
2章は「自然へのまなざし」。1552年頃からイタリア旅行に出たピーテル1世。道中のアルプスで、起伏のないネーデルラントとは異なる風景に魅せられました。自然への関心は、次男のヤン1世に受け継がれています。
1章「宗教と道徳」、2章「自然へのまなざし」3章は「冬の風景と城砦」。ピーテル1世の長男が、ピーテル2世。父の忠実な模倣作を描き、父の名声を不動のものにしました。《鳥罠》はピーテル2世の工房の内外で量産され、130点以上の作品が確認されています。
4章は「旅の風景と物語」。ブリューゲル一族が活躍したのは、商業の中心地として栄えたアントウェルペン(アントワープ)。旅や貿易は、格好の画題になりました。ピーテル1世の次男・ヤン1世や、その長男・ヤン2世らの作品が並びます。
5章は「寓意と神話」。戦争と平和、自然を構成する元素など、四大元素(大地・水・大気・火)など、概念を絵画にした寓意画。このジャンルを得意としていたのはヤン2世です。
3章「冬の風景と城砦」、4章「旅の風景と物語」、5章「寓意と神話」6章は「静物画の隆盛」。美しい花卉画で「花のブリューゲル」とも呼ばれたヤン1世。息子のヤン2世も父の作品を模範としました。静物画もヴァニタス(虚栄)の意味があり、‘美しいものもいずれ朽ちる’というメッセージが込められています。
最後の7章「農民たちの踊り」に、本展メインビジュアルのピーテル2世《野外での婚礼の踊り》が登場。17世紀フランドル絵画において人気が高い画題です。ピーテル2世も約20年にわたって描いていますが、本作は最初期の作例で、かつ最良の作品のひとつとされています。
6章「静物画の隆盛」、7章「農民たちの踊り」出展作品のほとんどが日本初公開という、貴重な展覧会です。東京展の後は、愛知展(4月24日~7月16日、豊田市美術館)、北海道展(7月28日~9月24日、札幌芸術の森美術館)で開催。その後に広島県・福島県に巡回します。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2018年1月21日 ]■ブリューゲル展 に関するツイート