「石炭の神様」といわれた実業家の佐藤慶太郎氏から寄付を受け、1926年5月1日に開館した東京都美術館(当時は東京府美術館)。1975年に前川國男の設計による新館に生まれ変わり、上野動物園隣の特徴的なレンガ色の建物は、長く親しまれていました。
新館が建てられてから35年。設備の老朽化やユニバーサルデザイン不足、レストランやミュージアムなどがニーズを満たしていないなどの問題が徐々に大きくなってきたため、2010年4月から改修工事に入っていました。
35年を経ても躯体には問題はなかったため、リニューアルでは都民に愛されていた佇まいを残した上で、内部が大幅に改修されています。
まず、地下広場にはエレベーターとエスカレーターを設置。正門からエントランスへの導入がスムーズになりました。
拡充された地下エントランスロビーの奥には、ミュージアムショップが整備されました。都美術館では「新伝統工芸プロデュース事業2012」として、伝統工芸の技を用いたミュージアムグッズのデザインを募集しており(2012年5月7日まで)、選抜されたデザインは商品化され、2012年10月からこのショップで販売されます。
企画展示室の天井高は4.5メートルに。上下階へはエスカレーターが主動線になりました。4つの公募展示室は明快に色分けされ、床はカーペットとなっています。
カフェやレストランが拡充したのもポイントです。1階にはカフェと休憩コーナーが設けられ、佐藤慶太郎氏を顕彰するアートラウンジも整備されました。
開放感がある2階にはカジュアルレストランを新設。交流棟の1階にはハイグレードレストラン「アイボリー」が入りました。
再開後の東京都美術館は「展覧会」「アート・コミュニケーション」「公募展」「アメニティ」という4つの事業が柱です。東京藝術大学との連携プロジェクト「とびらプロジェクト」ではアート・コミュニケータ「とびラー」が誕生。生まれ変わった“トビカン”の活動に注目したいと思います。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2012年3月29日 ]