冒頭は平安時代の古筆から。日本画の美術館として知られる山種美術館ですが、実は古筆のコレクションも充実しています。ただ、展示されるのは久しぶりのものも多く、平安時代の≪石山切≫は15年ぶりとなります。
書を書く紙である‘料紙(りょうし)’。金銀を用いて料紙を装飾することは平安時代に隆盛を極めました。当時のあるゆる技法を駆使して発想豊かにデザインし、後の琳派にも大きな影響を与えました。
動画では分かりにくいですが、料紙には美しい装飾が施されています展覧会の目玉のひとつが、俵屋宗達(款)の≪源氏物語図 関屋・澪標≫。静嘉堂文庫美術館が所蔵する屏風(国宝)とほぼ同じ構図です。同じ工房で制作されたも可能性も指摘されており、今後の調査結果も待たれます。
その奥には、展覧会メインビジュアルの酒井抱一≪秋草鶉図≫。細い秋の草と動きのある鶉(うずら)を繊細に描き、背景のアーモンド形の月とのコントラストが際立ちます。黒っぽく見える月は、銀が焼けたものではなく、意図的に表面を黒くしたものと考えられています。
俵屋宗達(款)≪源氏物語図 関屋・澪標≫の奥に、酒井抱一≪秋草鶉図≫さらに先では横山大観や下村観山らの屏風絵などを紹介。小さな第二展示室にも速水御舟、上村松園ら明治~昭和の近代日本画が並びます。
下村観山≪老松白藤≫、横山大観≪竹≫、石井林響≪寒山≫と屏風が並ぶ第二展示室華やかさで目をひく一点としてご紹介したいのが、「最後のやまと絵師」と言われた松岡映丘の≪春光春衣≫。平安王朝の高雅な世界を、画面いっぱいに描きました。大正6年の作品です。
松岡映丘の≪春光春衣≫いつもは館の所蔵作で展覧会を開くことが多い山種美術館ですが、本展は館外からの作品も多数揃えた意欲展。雄大な琳派の流れを俯瞰する好機となりそうです。
なお、会期は前期が2013年2月9日(土)~3月3日(日)、後期が3月5日(火)~3月31日(日)で、多くの出展作品が入れ替わります。前期の半券を持参すれば、後期展が割引になるお得なサービスも実施中です。(取材:2013年2月8日)