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    レポート
    ユートピアを求めて
    神奈川県立近代美術館 葉山 | 神奈川県
    際立つポスターデザイン
    ロシア革命前からソヴィエト連邦初期までのポスター約180点を紹介する展覧会。DCブランド「BA-TSU」の創業者で、世界的なポスターコレクターでもある故・松本瑠樹(まつもとるき)氏のコレクションです。
    大量のポスターに彩られた会場は圧巻です
    第一次大戦中の愛国主義プロパガンダとして作られた「今日のルボーク」
    第2章「ネップ(新経済政策)とロシア・アヴァンギャルドの映画ポスター」
    左の3点が「戦艦ポチョムキン」のポスター
    左はグスタフ・クルーツィス《マルクス、エンゲルス、レーニン、スターリンの旗をより高く!》
    8点全て、グスタフ・クルーツィスによるデザイン
    第3章「第一次五カ年計画と政治ポスター」
    左はエリ・リシツキー《ソヴィエト社会主義共和国連邦ロシア展覧会》
    会場入口には、楽しい仕掛け「ろしアナ」も
    ロシア革命からソ連建国まで、政治の激変期に重なっていた芸術運動「ロシア・アバンギャルド」。西側とは違うその独特のデザイン性に魅せられるファンは少なくありません。

    本展はこの時期にロシアで作られたエネルギッシュなポスターを3章にわたって紹介する企画です。

    まず第1章は「帝政ロシアの黄昏から十月革命まで」。革命政府の赤軍が旧ロシア帝国軍の白軍を撃破した内戦を象徴する、エリ・リシツキーの《赤い楔(くさび)で白を打て》。

    明るい画風と裏腹に内容がブラックな「今日のルボーク」は、第一次大戦中の愛国主義プロパガンダとして作られたものです。


    第1章「帝政ロシアの黄昏から十月革命まで」

    第2章は「ネップ(新経済政策)とロシア・アヴァンギャルドの映画ポスター」。展覧会メインといえるこの章に、最多の120点が並びます。

    識字率が低い国民を教育するために映画を活用したレーニン。ただ、激増する映画館に国産映画は追いつかず、外国映画とニュース映画で補っていました。展示されている映画ポスターも、約3分の1は輸入映画です。

    同じデザインでアラビア語入りの別刷りがあるポスターは、ウズベク・ソヴィエト社会主義共和国で発行されたもの。原版は名高いステンベルク兄弟によるデザインですが、勝手に色を増やし、原版の良さは台無しです。著作権の意識はありませんでした。


    第2章「ネップ(新経済政策)とロシア・アヴァンギャルドの映画ポスター」

    さらに進むと、大きな展示室を埋め尽くすように並ぶポスターは圧巻です。極めて豊かなデザイン性。「ソ連」という言葉のイメージとは、だいぶ異なります。

    「戦艦ポチョムキン」は、国内外ではじめて成功を収めたソヴィエト映画です。ポスターは何種類も作られ、会場では3段掛けで紹介されています。


    3段掛けの「戦艦ポチョムキン」

    第3章は「第一次五カ年計画と政治ポスター」。1929年に第一次五カ年計画が採択されると、近代化を進めるために数多くの政治ポスターが作られました。

    この章で目立つのは、グスタフ・クルーツィス(1895-1938)が手がけたポスター。高く掲げた手をコラージュしたり、赤い4つの旗を背景にマルクス、エンゲルス、レーニン、スターリンを並べたりと、そのデザインセンスは群を抜いています。


    第3章「第一次五カ年計画と政治ポスター」

    この後、1932年には共産党中央委員会の命により、全ての芸術団体が解散。ポスター芸術もそれまでのような輝きは見られなくなっていきました。

    前述のクルーツィスも1938年に逮捕。まもなく処刑されました。

    旧東側諸国のデザイン展では、ちょうど東京国立近代美術館フィルムセンターでも「チェコの映画ポスター」展が開催中(12月1日まで)。時代的には少し違いますが、あわせてお楽しみください。

    なお、本展は2014年9月30日~11月24日、世田谷美術館に巡回します。
    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2013年10月30日 ]

    磔のロシア――スターリンと芸術家たち

    亀山 郁夫 (著)

    未来社
    ¥ 1,407

     
    会場
    会期
    2013年10月26日(土)~2014年1月26日(日)
    会期終了
    開館時間
    9:30~17:00(入館は16:30まで)
    休館日
    月曜日休館 ただし11月4日(振休)、12月23日(月祝)、1月13日(月祝)は開館)、年末年始は休館(12月29日(日)~1月3日(金) )
    住所
    神奈川県葉山町一色2208-1
    電話 046-875-2800
    公式サイト http://bit.ly/71bR9
    料金
    一般 1,100円(1,000円)/20歳未満・学生 950円(850円)
    65歳以上 550円 /高校生 100円
    ※()内は20名以上の団体料金です。
    ※中学生以下、障害者手帳をお持ちの方は無料です。その他の割引につきましてはお問合わせ下さい。
    展覧会詳細 ユートピアを求めて 詳細情報
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