IM
    レポート
    現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展 ヤゲオ財団コレクションより
    東京国立近代美術館 | 東京都
    50億円でお買い物
    「美術品の価値」って、綺麗だから? 上手いから? 有名な画家だから? 値段が高いから?? 台湾のヤゲオ財団のコレクションを紹介する本展で、美術品の価値について考えたいと思います。
    (左手前)マーク・クイン《ミニチュアのヴィーナス》2008年
    (左から)サンユウ《蓮に白鶴》1950-60年 / サンユウ《6頭の馬》1930年代
    (左から)マルレーネ・デュマス《若い少年たち》1993年 / ピーター・ドイグ《カヌー・湖》1997年
    (左から)ザオ・ウーキー《30.7.64》 / ザオ・ウーキー《26.8.94》1994年
    (左)セシリー・ブラウン《家具つきの一人部屋》2000年
    (左手前)ロン・ミュエク《若者》2009年
    ホセ=マリア・カーノ《なぜ、マーケットを注視しておいて損はないのか》2006年 / ホセ=マリア・カーノ《WS100 小泉純一郎》2007年 / ホセ=マリア・カーノ《RM マドンナ》2010年
    会場出口のゲーム「コレクター・チャレンジ」
    マーク・クイン《神話(スフィンクス)》2006年
    美術品の「持ち主」は、大まかに三種類に分けられます。まず作家やその遺族ですが、これはいわば生産者。美術品を集めているのは残りの二つで、ひとつは美術館。そしてコレクターです。

    美術品収集において、公共性が求められる美術館は評価が確立した作家にしか手が出しにくいものですが、コレクターは主観で集める事が可能。ゆえにスピード感の差は大きく、美術品マーケットではコレクターの意向が「価格」という形で現れます。

    美術品の価値はひとつではありませんが、価格も大きな価値のひとつ。ただ、美術展で作品の価格を口にするのは“下世話”という雰囲気がありました。本展ではあえて、価格も含めて美術品の価値を考えていきます。


    ヨーガのポーズを取る巨大なケイト・モス像は、美術館の前庭で展示。 マーク・クイン《神話(スフィンクス)》2006年

    展覧会を開けるほど多くの作品を所蔵するコレクターは、「アメリカン・ポップアート展」(国立新美術館 2013年)のパワーズ夫妻など欧米人が有名ですが、近年、アジアの富裕層も存在感が大きくなっています。本展のヤゲオ財団も、台湾資本の大手パッシブ(電子部品)メーカー、ヤゲオ・コーポレーションのCEOであるピエール・チェン氏らが創立した財団です。

    会場に並ぶのは40作家、74作品。常玉(サンユウ)、フランシス・ベーコン、ザオ・ウーキー、アンディ・ウォーホル、サイ・トゥオンブリー、ゲルハルト・リヒター、杉本博司、蔡國強、ロン・ミュエク、ピーター・ドイグ、マーク・クイン(以上、生年順)など、現代美術の中核ともいえるラインナップです。展覧会タイトルの「ハードコア(=中核)」は、ここから名付けられました。

    コレクターが作品を収集する過程で、画商や美術史家などの専門家がアドバイザーとして関わる事は少なくありませんが、ヤゲオ財団のコレクションは、基本的にピエール・チェン氏自身が判断しています。「アートとともに生活すること(Living with art)」を主眼にしているため、現代美術ではあるものの、ジャンルは絵画や彫刻などの伝統的なものが多く、映像やインスタレーションなどはありません。

    展覧会の会場は「ミューズ」「崇高」「記憶」「新しい美」など10のキーワードで構成。それぞれ、章解説に美学的な視点とともに、文化経済学的な見地からの解説があるのも特徴的です。

    まさに「世界の宝」といえるほど、莫大な金額で取引される事も多い現代美術。会場最後のゲーム「コレクター・チャレンジ」が、展覧会の目玉のひとつといえるでしょう。

    会場で展示されている作品の中で、マークが付いているものが購入可能(もちろんゲームの中で、です)。作品を最大5点選んで、50億円以内で作品を選んでいきます。好きな作品=自分の中で価値が高い作品は、経済的な価値=価格はどうなのか。50億円は高額ですが、調子に乗ってベーコンもウォーホルもロスコも買っていくと… ぜひ会場でお楽しみください。


    ゲーム「コレクター・チャレンジ」

    展覧会の担当学芸員は、昨年の「フランシス・ベーコン展」と同じ保坂健二朗さん。保坂さんがヤゲオ財団にベーコン作品の借用を申し出た際にピエール・チェン氏の自邸に招かれ、著名な現代美術がゴロゴロあるのを見て驚愕したのが、本展のきっかけだそうです。

    東京を皮切りに、全国巡回する本展。東京展の後は名古屋(名古屋市美術館 9月6日~10月26日)、広島(広島市現代美術館 12月20日~2015年3月8日)、京都(京都国立近代美術館 2015年3月31日~5月31日)と巡回します。
    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年6月19日 ]


     
    会場
    会期
    2014年6月20日(金)~8月24日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~17:00(入館は16:30まで)
    ※金曜・土曜は20:00まで開館(入館は19:30まで)
    休館日
    月曜日(7月21日は開館)、7月22日(火)
    住所
    東京都千代田区北の丸公園3-1
    電話 03-5777-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト http://www.momat.go.jp/Honkan/core/index.html
    料金
    一般1,200円(900円)/大学生500円(250円)
    *高校生以下および18歳未満、障害者手帳等をご提示の方とその介添者(1名)は無料。
    *( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。
    展覧会詳細 現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展 ヤゲオ財団コレクションより 詳細情報
    おすすめレポート
    学芸員募集
    大阪府立博物館 学芸員募集(考古・古代史) [大阪府立近つ飛鳥博物館 又は 大阪府立弥生文化博物館]
    大阪府
    【公益財団法人ポーラ伝統文化振興財団】学芸員募集 [ポーラ伝統文化振興財団(品川区西五反田)141-0031 東京都品川区西五反田2-2-10 ポーラ五反田第二ビル]
    東京都
    丸沼芸術の森 運営スタッフ募集中! [丸沼芸術の森]
    埼玉県
    八尾市歴史民俗資料館 学芸員募集中! [八尾市歴史民俗資料館での学芸員職]
    大阪府
    観峰館 学芸員募集中! [観峰館]
    滋賀県
    展覧会ランキング
    1
    東京ドームシティ Gallery AaMo(ギャラリー アーモ) | 東京都
    逆境回顧録 大カイジ展
    開催中[あと44日]
    2024年3月16日(土)〜5月12日(日)
    2
    SOMPO美術館 | 東京都
    北欧の神秘 ― ノルウェー・スウェーデン・フィンランドの絵画
    開催中[あと72日]
    2024年3月23日(土)〜6月9日(日)
    3
    東京都美術館 | 東京都
    印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵
    もうすぐ終了[あと9日]
    2024年1月27日(土)〜4月7日(日)
    4
    東京国立近代美術館 | 東京都
    美術館の春まつり
    もうすぐ終了[あと9日]
    2024年3月15日(金)〜4月7日(日)
    5
    国立科学博物館 | 東京都
    特別展「大哺乳類展3-わけてつなげて大行進」
    開催中[あと79日]
    2024年3月16日(土)〜6月16日(日)