子どもが社会から守られるのはいつの時代でもあたり前ですが、江戸時代の日本は特筆もの。小さな子どもは神からの授かりものとして慈しみ深く育てられ(一因として、幼児の死亡率が高かった事もあります)、子どもたちも伸び伸びと過ごす事ができました。
子どもの日常を描いた浮世絵も数多く作られ、本展も春信、清長、歌麿、北斎、広重、国芳など錚々たる名前がずらり。「子どもを描いた浮世絵」に、多くの需要があった事にも驚かされます。
第1章「子どもへの愛情」子どもの無事な成長は、親にとって心からの願い。江戸時代は「7才までは神のうち」とされ、節目にあたる行事も重要な意味を持っていました。
七五三はもともと上流階級の行事でしたが、江戸時代には一般化。雛祭や端午の節句の絵にも、楽しそうな子どもの姿が見られます。
第2章「子どもの成長を願う」男女別で寺子屋があった江戸時代。この時代に女が読み書きができたという事は、極めて先進的といえる社会でした。
一寸子花里(いっすんしはなさと)の《文学ばんだいの宝 末の巻》は、寺子屋を描いた作品。先生の近くの子が真面目で、離れた場所の子がふざけているのは、今も昔も変わりません。
女の子にとっては、音曲や踊りの稽古も人気がありました。歌川国輝《湯島音曲さらいの図》は、湯島の料亭を借り切った音曲のおさらい会、すなわち発表会の模様です。
一寸子花里《文学ばんだいの宝 末の巻》 / 歌川国輝《湯島音曲さらいの図》家の中ではままごと、人形遊び、双六、かるた。外では竹馬、相撲、こま回し、鬼ごっこ。スマホもDSもありませんが、江戸の子どもは実に楽しそうに遊びます。
川遊びをする子どもたちを描いたのは、菊川英山の《すな鳥子供遊》。美人画で知られる英山らしい若い母親の面持ちと、笑顔で川に入る子どもたちのムチムチの体が印象的です。
菊川英山《すな鳥子供遊》江戸時代に木版技術が発達し、子ども向けの書物も作られました。展示されているのは金太郎、牛若丸と弁慶、舌切り雀、さるかに合戦など。会場には現代の絵本も用意されており、比べて楽しむ事もできます。
ちょっと面白いのは、絵巻の桃太郎。流れてきた桃は小さく、食べると老夫婦が若返り、生まれた子どもが桃太郎というストーリーです。実は江戸時代に桃太郎を描いた絵巻は、ほとんどがこの「回春型」バージョンです。
第6章「子どもの好きなお話」本展は公文教育研究会の所蔵作品を中心とした企画展。公文教育研究会は江戸時代の子どもにまつわる史料約3,200点を保有し、なかでも「子ども浮世絵」については世界でも類を見ない豊富なコレクションとして知られています。
ぜひお子様連れをオススメしたい展覧会。子ども(高校生以下)と一緒に来館すると、大人の観覧料が800円から500円になるという、ちょっと珍しい「親子割引」があります(高校生以下の子どもは、もともと無料です)。前期(7月8日~8月3日)と後期(8月5日~8月31日)で大幅に展示替え。半券を提示すると、会期中2回目以降の観覧料が2割引の「ごひいき割引」も実施中です。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年7月10日 ]※こちらでご紹介している作品は、すべて前期展示となります。
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