日本で開催される大英博物館の展覧会は、2011年に「
大英博物館 古代ギリシャ展」、2012年には「
大英博物館 古代エジプト展」が開催されましたが、今回は世界中が舞台。「人類の創造の歴史をたどる」という大きなテーマで、大英博物館の8つの全所蔵部門を横断して100点がセレクトされました。
プロローグに並ぶのは、古代エジプトの人型の棺と、現代のガーナのライオンの形の棺桶。両者の間には2600年の開きがありますが、棺を美しく整えて死者を尊ぶ気持ちは変わる事はありません。
続いて、100の「モノ」を時代順に展示。大英博物館最古の《オルドヴァイ渓谷の礫石器》(200万~180万年前)を皮切りに1~100の番号がつけられ、1点1点について資料の背景が詳細に解説されています。
会場入口から 順に 《オルドヴァイ渓谷の礫石器》200万–180万年前 タンザニア、オルドヴァイ渓谷 / 《オルドヴァイ渓谷の握り斧》140万–120万年前 タンザニア、オルドヴァイ渓谷 / 《トナカイの角に彫られたマンモス》1万4000–1万3500年前 フランス、モンタストリュック / 《鳥をかたどった乳棒》紀元前6000–前2000年 パプアニューギニア、オロ州 / 《アボリジニの編み籠》1875–1927年 オーストラリアでは、注目の展示品をいくつかご紹介しましょう。
No.013は、日本の教科書でも紹介されている《ウルのスタンダード》。メソポタミアの古代都市ウルで、王家の墓から見つかった箱で、「スタンダード(軍旗)」と通称で呼ばれていますが、実際の用途は分かっていません。
ラピスラズリなどを用いた贅沢なつくりは、ウルが経済的に豊かだった証拠。片面には祝宴の様子が、もう片面には戦争の様子がモザイクで描かれています。
《ウルのスタンダード》紀元前2500年頃 イラク 大英博物館蔵No.062は《ルイス島のチェス駒》。映画「ハリー・ポッター」第1作に登場したため、世界で最も有名なチェスの駒といえるかもしれません。
素材はほとんどがセイウチの牙。スコットランドのルイス島で見つかりましたが、中世のセイウチ牙貿易の中心地、ノルウェー・トロンヘイムで作られたと考えられています。
チェスはインドが起源ですが、ヨーロッパに入って追加されたのがクイーンとビショップ(司教)。聖職者の地位の高さが反映されています。
《ルイス島のチェス駒》1150〜1200年 イギリス・ルイス島、おそらくノルウェーで製作 大英博物館蔵No.064は《イフェの頭像》。1300~1400年代初期にナイジェリア・イフェで作られた、真鍮製の頭像です。
像が発見されたのは1939年。この時代のヨーロッパ人は、アフリカには見るべき芸術品は存在しないと考えていましたが、見事なリアリズムに驚愕。アフリカの歴史と文化に対する認識は一変されました。
《イフェの頭像》ナイジェリア・イフェ 1300〜1400年代初期 大英博物館蔵《ソーラーランプと充電器》まででちょうど100点ですが、会場には開催館ごとに選んだ101点目も紹介されています。こちらはぜひ、会場でご覧ください。
東京都美術館での開催は6月28日まで。その後は福岡(
九州国立博物館:7月14日~9月6日)、神戸(
神戸市立博物館:9月20日~2016年1月11日)に巡回します。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年4月17日 ]■大英博物館展 に関するツイート