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    レポート
    恩地孝四郎展
    東京国立近代美術館 | 東京都
    出展は約400点!20年ぶりの大回顧展
    日本における抽象美術の先駆者で、木版画近代化の立役者でもある、恩地孝四郎(おんちこうしろう:1891-1955)。20年ぶりの大回顧展が東京国立近代美術館で開催中です。
    第3章「抽象への方途 1945-1955年」
    第1章「『月映』に始まる 1909-1924年」
    (左から)《人物》1922年 和歌山県立近代美術館 / 《頬杖をつく女性》1913年[制作年不詳] ボストン美術館
    (左から)《「今代婦人八態」湯上り》1934年 千葉市美術館 / 《「今代婦人八態」新聞》1935年 千葉市美術館
    第2章「版画・都市・メディア 1924-1945年」 生涯にわたって携わった装幀の仕事
    (右)《「大東亜会議参列代表像」Maw主席像》1943年
    (左から)《ダイビング》1933年頃 横浜美術館(北岡文雄氏寄贈) / 《ノックダウン》1932年
    (左から)《あるヴァイオリニストの印象(諏訪根自子像)》1946年 東京国立近代美術館 / 《[失題]》1946年頃
    (左から)《オブジェ No.1》1954年 養清堂画廊 / 《オブジェ No.2》1954年 ホノルル美術館 / 《イマージュ No.6 母性》1951年 青森県立美術館
    昨年、東京ステーションギャラリーなど各地を巡回した「『月映(つくはえ)』 田中恭吉・藤森静雄・恩地孝四郎」展も記憶に新しい、恩地孝四郎。恩地だけに焦点をあてた展覧会は20年ぶり3回目。東京国立近代美術館に限ると、1976年の「恩地孝四郎と『月映』」展以来、実に40年ぶりの開催となります。

    第1章は「『月映』に始まる 1909-1924年」。1909年、18歳の恩地は、私淑していた竹久夢二と親密な交友関係を結びました。夢二の「誌のような画」に共感した恩地は、心の内側から湧き出る表現を追及していきます。

    1914年には田中・藤森とともに、詩画集『月映』を制作。公刊『月映』Ⅴに掲載された《抒情『あかるい時』》は、後に日本で最初の抽象表現と評されました。

    《抒情『あかるい時』》の版木を良く見ると、雲母(きら)の輝きが。版画は機械刷りと手刷りが並んで展示されており、手刷りの方は雲母摺(きらずり)が確認できます。


    第1章「『月映』に始まる 1909-1924年」

    第2章は「版画・都市・メディア 1924-1945年」。人間のからだを分解・簡略化したような「人体考察」シリーズは、この時期の作品です。

    1942年には、若い頃から親交を結んだ詩人の萩原朔太郎と北原白秋が相次いで死去。リアルな表現の肖像が展示されていますが、油彩画ではなくこれも木版画です。

    戦時色が強まる中、日本版画奉公会が発足すると恩地は理事長に。各地で慰問版画展を開催するほか、大東亜会議に参列した代表の肖像なども手掛けています。


    第2章「版画・都市・メディア 1924-1945年」

    第3章は「抽象への方途 1945-1955年」。社会情勢が激変しますが、恩地は幸運にも創作版画を収集するGHQ関係者の庇護を受ける事となります。

    戦後の恩地は、ほぼ抽象一本。この時期の作品は海外での高評価を受け、国外のミュージアムが良品を所蔵しています。実は長い間、日本で回顧展が開催できなかったのもこのため。今回は大英博物館・シカゴ美術館・ボストン美術館・ホノルル美術館という名だたる美術館の協力を得て、海外所蔵作品が62点も出展されています。

    戦後の恩地は、布切れや紙ひもなど、身のまわりのものを直接に版として用いた「版を彫らない版画」にも挑戦。サンパウロ・ビエンナーレで作品を発表するなど、精力的に活動を続けました。


    第3章「抽象への方途 1945-1955年」

    小品の版画が主体という事はありますが、出展作品は約400点という膨大さ。動線も長く、見応えたっぷりです。ゆっくりとお時間をとって、お楽しみください。

    東京展は2月いっぱい。続いて4月29日(金・祝)~6月12日(日)に、和歌山県立近代美術館に巡回します。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年1月12日 ]

    恩地孝四郎 ― 一つの伝記恩地孝四郎 ― 一つの伝記

    池内 紀 (著)

    幻戯書房
    ¥ 6,264


    ■恩地孝四郎展 に関するツイート


     
    会場
    会期
    2016年1月13日(水)~2月28日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~17:00(入館は16:30まで)
    ※金曜・土曜は20:00まで開館(入館は19:30まで)
    休館日
    月曜日休館
    住所
    東京都千代田区北の丸公園3-1
    電話 03-5777-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト http://www.momat.go.jp/am/exhibition/onchikoshiro/
    料金
    一般1,000(800)円
    大学生500(400)円
    ※( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。
    ※高校生以下および18歳未満、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。それぞれ入館の際、学生証等の年齢のわかるもの、障害者手帳等をご提示ください。
    ※キャンパスメンバーズ加入校の学生は、学生証の提示で割引料金400円でご鑑賞いただけます。
    展覧会詳細 恩地孝四郎展 詳細情報
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