筆者の世代なら「YAWARA!」、若い人なら「20世紀少年」や「PLUTO」と、デビューから33年の間に発表された長編連載8作のすべてが大ヒットという稀代のヒットメーカー、浦沢直樹さん(そのため、打ち切りの経験が無い事にも驚かされます)。
ジャンルもミリタリーアクション、スポーツ、ヒューマンドラマ、ミステリー、科学冒険漫画と多彩。魅力的なキャラクターを自在に操り、読者を手玉に取るようなストーリーは、多くのファンを惹きつけています。
展覧会は浦沢さんの創作を網羅的に紹介する企画です。膨大な量の漫画原稿(単行本一冊丸ごと分あります)を核に、少年時代に描いた漫画ノートやストーリーの構想メモ、ネーム、下書きなどの資料も含めて幅広く紹介。幼少期からの常人ばなれした画才を見ると、こういう人だからヒットメーカーになれるんだ、と、妙に納得してしまいます。
1階のキャラクターパネルのほか、2階の会場内にも撮影スポットが2カ所設置。ショップではオリジナルグッズも販売され、多くのファンで賑わっていました。
「浦沢直樹展 描いて描いて描きまくる」会場漫画家の創作物はもちろん原画ですが、ここまで原画が溢れた展覧会は珍しい試み。浦沢さんの単行本はオリジナル版だけで約150冊、原稿は約3万ページに上りますが、全てが浦沢さんによる地道な手作業の積み重ねという事を思うと、気が遠くなりそうです。
会場では作画の模様を撮影したムービーも紹介されていますが、手慣れた様子ながらも、1コマ1コマをとても丁寧に仕上げていく姿が印象的でした。
なお、展覧会にあわせて出版された「浦沢直樹 描いて描いて描きまくる」には、担当者とのロングインタビューが収録されています。尊敬する故・手塚治虫が『浦沢氏、それはダメですよ』と目線を送るように感じる、など、楽しいエピソードが満載。14万5千字という長文ですが、一気に読み進んでしまいました。会場での販売のほか、書店やネットでも購入可能です。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年1月19日 ]■浦沢直樹展 に関するツイート