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    レポート
    ヌード NUDE ―英国テート・コレクションより
    横浜美術館 | 神奈川県
    裸体表現の200年
    西洋美術において、ヌードは最も身近なテーマのひとつ。時代によって表現は異なりますが、古くから数多くの作家がヌードに挑んでいきました。英国テートが所蔵する122点に国内所蔵の12点を加え、19世紀から現代までの裸体表現を辿る展覧会が、横浜美術館で開催中です。
    オーギュスト・ロダン《接吻》
    (左から)ジョン・エヴァレット・ミレイ《ナイト・エラント(遍歴の騎士)》 / ウィリアム・エッティ《寝床に就く妻を下臣ギュゲスに密かに見せるリディア王、カンダウレス》
    (左から)アンナ・リー・メリット《締め出された愛》 / ハーバート・ドレイパー《イカロス哀悼》
    (左から)ピエール・ボナール《浴室の裸婦》 / 《浴室》
    (左から)ハンス・ベルメール《人形》 / 《人形》
    (左から)ジョルジョ・デ・キリコ《詩人のためらい》 / ポール・デルヴォー《眠るヴィーナス》
    ルイーズ・ブルジョア (左上)《カップル》 / (左下)《親しみのある風景》 / (中央5点、中央)《誕生》 / (中央5点、最上部から時計回りで)《授乳》 / 《家族》 / 《カップル》 / 《授乳》 / 《女性》 / (右)ルシアン・フロイド《布切れの側に佇む》
    サラ・ルーカス (左手前3点、左から)《NUD CYCLADIC 6》 / 《NUD CYCLADIC 10》 / 《NUD CYCLADIC 3》 / (右)シルヴィア・スレイ《横たわるポール・ロサノ》
    シンディ・シャーマン (左から)《無題 #97》 / 《無題 #98》 / 《無題 #99》
    ひとりひとりが、必ず持っている身体。ただ、ありのままの身体=ヌードの表現は、美術において常に論争の的となってきました。

    ヌードの社会的な位置づけも踏まえつつ、表現の変遷を追う本展。前半は「物語とヌード」「親密な眼差し」「モダン・ヌード」と進みます。

    ヴィクトリア朝の英国では、女性ヌードには多くの制約がありました。滑らかな肌で生々しさを排除した、フレドリック・レイトン。逆にウィリアム・エッティらは、主題や表現が適切でないと批判されました。

    都市生活とヌード表現が結び付いたのは、19世紀末から。ピエール・ボナールは妻をモデルに、入浴する人物を描きました。対象との距離の近さが際立ちます。

    キュビスムや未来派などのモダニズムの作家も、ヌードをテーマにしています。そのアプローチ方法は、プリミティヴ・アートにも類似しています。


    1~3章

    展覧会メインビジュアルとして大きく紹介されているのが、オーギュスト・ロダン《接吻》。「エロティック・ヌード」の章で展示されています。

    ロダンは、生存中に大理石像の《接吻》を3体制作しています。フランス政府が発注した作品と、それを見たコレクターによって注文された2作品で、本展で来日したのは後者。高さ182.2センチの大作で、エロティシズムと理想主義が完全に調和した傑作です。

    ロダンの《接吻》は、約100年前に武者小路実篤が絶賛するなど、日本でも早くから注目を集めていましたが、今回が待望の初来日。しかもこの作品のみ、どなたでも撮影いただけます。


    4章「エロティック・ヌード」 オーギュスト・ロダン《接吻》

    後半は「レアリスムとシュルレアリスム」「肉体を捉える筆触」「身体の政治性」「儚き身体」という流れ。社会や意識の変化にともなって、ヌード表現もさまざまな様相を見せていきます。

    球体関節人形のハンス・ベルメールは、ふたつの臀部を持つ人体を制作。バルテュスによるエロティックな表現は、今日でも物議を醸しています。

    50年代以降には、絵画の筆触を重視した絵画が制作。フランシス・ベーコンは孤独や不安を表現。ルシアン・フロイドは厚塗りで濃密なヌードを描きました。

    70年代にはフェミニズムの意識が高揚。「男性からの視線」というそれまでのヌードに対し、真っ向から対峙する動きも生まれました。

    最後に展示されている、フィオナ・バナー《吐き出されたヌード》は、裸体のモデルを言葉で記述したもの。肉体は全く描かれていませんが、ヌード作品です。


    5~8章

    200年に渡るヌードの表現の変遷を一望できる展覧会。テートにより国際巡回展として企画されたもので、2016年にシドニー(オーストラリア)で始まり、オークランド(ニュージーランド)、ソウル(韓国)と巡回してきました。日本では横浜美術館だけでの開催です。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2018年3月23日 ]

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    新潮社
    ¥ 1,440


    ■横浜美術館 NUDE に関するツイート


     
    会場
    会期
    2018年3月24日(土)~6月24日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~18:00
    (入館は閉館の30分前まで)
    休館日
    木曜日、5月7日(月) *ただし5月3日(木・祝)は開館
    住所
    神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1
    電話 03-5777-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト https://artexhibition.jp/nude2018/
    料金
    《一般》 ¥1,600 [1,400 / 1,500]
    《大学・専門学校生》 ¥1,200 [1,000 / 1,100]
    《中学・高校生》 ¥600 [400 / 500]
    ※小学生以下無料
    ※65歳以上は¥1,500(要証明書、美術館券売所でのみ対応)
    ※[ ]内は前売および有料20名以上の団体料金
    (団体券は美術館券売所でのみ販売、要事前予約 TEL 045-221-0300)
    ※障がい者手帳をお持ちの方と介護の方(1名)は無料
    展覧会詳細 ヌード NUDE ―英国テート・コレクションより 詳細情報
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