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    レポート
    大名茶人・松平不昧 -お殿さまの審美眼-
    三井記念美術館 | 東京都
    名品を集め、名品をつくる
    茶道の世界に大きな足跡を残した大名茶人・松平不昧(1751-1818)。確かな鑑識眼で名品を数多く蒐集し、その中には今日、国宝や重要文化財に指定されているものも多く見られます。今年はちょうど没後200年、記念の展覧会が三井記念美術館で開催中です。
    (左手前)《菊蒔絵大棗》原羊遊斎作 文化14年(1817) / (中央)《高台寺蒔絵大棗》余三作 桃山時代・16世紀 京都・北村美術館
    国宝《大井戸茶碗 喜左衛門井戸》朝鮮時代・16世紀 京都・孤篷庵
    (左奥)《唐物肩衝茶入 種村肩衝》南宋~元時代・13~14世紀 京都・野村美術館 / (右手前)《青磁中蕪花入 銘 夕端山》明時代・15世紀 東京・根津美術館
    《御茶器帳(雲州蔵帳)》江戸時代・19世紀 島根・月照寺
    (左手前)《桐茶箱 春の月》松平不昧/より子合作 江戸時代・19世紀 島根県立美術館 / (右奥)《桐茶箱》小林如泥作 江戸時代・19世紀
    (左手前)《置筒花入》松平不昧作 江戸時代・19世紀 島根県立美術館 / (右奥)《一重切竹花入 銘 ちとせ》松平不昧作 江戸時代・19世紀
    (左から)《かまきり蒔絵香合》原羊遊斎作/狩野伊川院栄信下絵 江戸時代・19世紀 / 《きりぎりす蒔絵香合》原羊遊斎作/狩野伊川院栄信下絵 江戸時代・19世紀 京都・野村美術館 / 《椿蒔絵香合》原羊遊斎作/狩野伊川院栄信下絵 江戸時代・19世紀
    (左から)《瓢箪自画賛》松平不昧筆 江戸時代・19世紀 / 《木枯烏図》狩野伊川院栄信筆/松平不昧賛 江戸時代・19世紀 / 《ふくべの図》酒井抱一筆/松平斎恒賛 江戸時代・19世紀
    (左奥から)《明々庵 釜》下間庄兵衛作 安永8年(1779)頃 島根・松江歴史館 / 《薩摩竹水指 銘 山川》松平不昧作 江戸時代・19世紀 / 《布志名焼 瀬戸写水指 土屋雲善作 江戸時代・19世紀
    松江藩松平家第七代藩主・治郷(はるさと)こと、松平不昧。若い頃より茶の湯を好み、道具も積極的に蒐集しました。

    会場は冒頭から、不昧が蒐集した名品が並びます。奥の展示室2にあるのは、国宝《大井戸茶碗 喜左衛門井戸》(展示期間:4/21~5/22、5/29~6/17)。不昧が所持していた三つの大井戸茶碗のうちのひとつです。

    この茶碗を所持した人は腫物を患うという伝承があり、不昧も言い伝えどおり腫物ができてしまいました。心配した不昧の正室は茶碗を手放すように進言しましたが、不昧は妻の願いを一蹴。心底、この茶碗を愛していたのです(ただ、不昧の没後、子も腫物になったため、茶碗は他所に移りました)。


    第1章「雲州蔵帳の名品 ─ 茶道研究の成果」

    不昧は10代初めから石州流茶道を学び、19歳で禅を志しています。江戸時代後期の茶道は遊芸化が進んでいましたが、不昧は利休の茶に帰る事を提唱、茶禅一味の茶の湯を目指しました。‘不昧’の号も、禅僧から授けられたものです。

    不昧が所持した茶道具は、松平家の蔵帳といえる『雲州蔵帳』に記されています。雲州蔵帳には類本があり、本展では、今まであまり知られていなかった月照寺(松江市)所蔵の『御茶器帳(雲州蔵帳)』が出品されています。

    不昧は56歳で隠居し、品川大崎の下屋敷(現在の御殿山)に移住。11棟の茶室がある庭園を造り、没するまでこの地で過ごしました。東都随一の名園と評判を呼びましたが、後年、黒船来航の際に品川沖警備の軍用地になり、取り壊されています。


    第2章「茶の湯を極める ― 大名茶人の誕生」

    不昧は名品を蒐集するだけでなく、名品を手本とし、さらに自分の美意識を反映して、職人に道具をつくらせました。

    蒔絵師の原羊遊斎につくらせたのが、豪華な《菊蒔絵大棗》。桃山時代につくられた余三作《高台寺棗》を手本にしたものです。

    余三作の《高台寺棗》は複数あり、どれを元にしたのかはっきりしませんでしたが、『御茶器帳(雲州蔵帳)』の記述から、本展出品のものが不昧の旧蔵品である事が判明しました。

    塗師では、初代・小島漆壺斎が有名。漆壺斎による《楽写菊桐蒔絵香合》も、不昧所持の古典作品から生まれたものです。


    第3章「プロデューサーとしての不昧 ― 洗練を極めたお好み道具」

    不昧没後200年を記念する展覧会は、畠山記念館でも「没後200年 大名茶人 松平不昧と天下の名物-『雲州蔵帳』の世界」展が開催中です。ふたつの展覧会で相互割引が行われており、半券の提示で入館料が割引になります。

    ※会期中に一部の展示替えがあります。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2018年4月20日 ]

    松平不昧―名物に懸けた大名茶人松平不昧―名物に懸けた大名茶人

    木塚久仁子(著)

    宮帯出版社
    ¥ 2,916


    ■三井記念美術館 に関するツイート


     
    会場
    会期
    2018年4月21日(土)~6月17日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~17:00(入館は16:00まで)
    休館日
    月曜日( ただし、4月30日(月)は開館)
    住所
    東京都中央区日本橋室町二丁目1番1号 三井本館7階
    電話 03-5777-8600 (ハローダイヤル)
    公式サイト http://www.mitsui-museum.jp
    料金
    一般 1,300(1,000)円/大学・高校生 800(700)円/中学生以下 無料

    ※70歳以上の方は1,000円(要証明)。
    ※( )内は20名以上の団体料金。
    ※リピーター割引あり。会期中一般券・学生券の半券ご提示で、2回目以降は団体料金となります。
    ※障がい者手帳をご呈示いただいたお客様、およびその介護者(1名)は無料です。
    展覧会詳細 大名茶人・松平不昧 -お殿さまの審美眼- 詳細情報
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