ポロック作品の初来日は、1951年の第3回読売アンデパンダン展。日本に所蔵されている作品も多いポロックですが、本格的な回顧展は日本では始めてとなります。
本展では全体を4章に分け、初期から晩年までの作品、計64点で振り返ります。国内にあるポロック作品28点も、全て展示されています。
会場
展覧会最大の目玉は、183x243.5センチの大作「インディアンレッドの地の壁画」。1950年に住宅用の壁画として描かれた作品です。赤褐色のキャンバスに白い線がひときわ映えるこの作品は、ポロックによるポーリングの完成形ともいえる最高傑作です。
この絵はテヘラン現代美術館の所蔵。イラン革命の3年前(1976年)、パーレビ王朝時代のイランのコレクションになりましたが、革命後は門外不出となっていました。クリスティーズによる評価額は200億円ともいわれますが、現在の国際情勢におけるイランの位置付けを考えると、今後も簡単には見られなさそうです。
「インディアンレッドの地の壁画」
もうひとつの注目は、会場最後に再現されたポロックのアトリエ。木造の小屋の床面には塗料が飛び散り、壁にはポロックが使用していたさまざまな画材とともに、人間の頭蓋骨も置かれています。
図録にはこのアトリエで制作中のポロックの写真が紹介されています。くわえタバコで絵の具を撒く姿は、男っぽい逞しさに溢れています。
再現されたポロックのアトリエ
広報資料には「日本での知名度は決して高くない」とありましたが、実は筆者にとっては憧れの大スター。中学時代に美術の先生がポロックについて熱く語っていたのを良く覚えています。「アクションペインティング」とよばれた描画法と、44歳で自動車事故で死去したことが強く印象に残っています。
制作の流れを通して見ると、その内面に秘めていた繊細さや奥深さも垣間見れるポロック。絶頂期に至るまでの様々な試行、「退行した」と言われた晩年の作品まで、ポロックの歩みを通してお楽しみ下さい。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2012年2月9日 ]