ガラスで器が作られるようになったのは、紀元前16世紀後半のメソポタミアから。当初は不透明の素材だったガラスは紀元前8世紀を過ぎると透明に変わり、中が透けることで色を愉しめるガラスの器は、酒が登場する場面で使われるようになりました。
展覧会では紀元前から現代の作家まで、約180件のガラス酒器を紹介しています。
会場入口から青いライティングで清々しいイメージの会場。導入の4階では「捧ぐ」「語らう」「誓う」「促す」の各シーンに関連する酒器が並びます。
儀式の際に用いられたと思われる動物の形が表現された酒杯、ワインを水で割るための大きな混酒器(古代ギリシャでは長時間語らいながら飲むため、ワインは水で割るのが一般的でした)、婚礼などで用いられた二段重ねの蓋付杯など、人々の営みと密接に繋がりながら、ガラス酒器は使われてきました。
展示室(4階)サントリー美術館は、4階から3階に下りる動線です。吹き抜け部では「酒器のいま」と題し、過去に生まれたガラス技術を研究・発展させながら美しい酒器を作っている6名の日本人作家の作品も展示されています。
「酒器のいま」3階は「祝い、集い、もてなし、愉しむ」。祝い事の席といえば、やはり酒。そこにはガラス酒器も欠かせません。
宴会の余興で使われたジョークグラス(トリックグラス)、鮮やかな模様の薩摩切子、そしてアール・ヌーヴォーを代表するエミール・ガレの作品など、強い個性が現れたデザインは来場者を愉しませてくれます。
展示室(3階)サントリー美術館の恒例ともいえる、美しいガラス器の展覧会。トークライブの他、江戸切子のワークショップなど関連行事も多彩です。お見逃しなく。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2013年9月10日 ]