「動く美術」という事だけなら1930年代のモビールも含まれますが、キネティック・アートという考え方が大きく育ったのは戦後になってから。機械文明の発達を受けて、機械に向き合いながら人間の感覚に訴える作品が次々に生まれていきました。
本展ではイタリアの作家を中心に、フランスやドイツで活動した作家たちもあわせ約90点を紹介。今から40~50年前に作られた作品が中心です。
会場キネティック・アートには、作品自体が動くのではなく、視線の移動によって変化する作品も含まれます。
例えばトーニ・コスタ《交錯》は、白い帯を捻ってストライプ状に並べたもの。視線を動かす事で、背景の青い部分が波打つように感じられます。
トーニ・コスタ《交錯》ガブリエレ・デ・ヴェッキ《軸測投影法の歪み_1》は、立体的なフレームと、その影を使った作品。
スイッチを入れるとフレームがついた円盤が回転。じっと見ていると、立体が不思議な形に変化していくように思えてきます。
ガブリエレ・デ・ヴェッキ《軸測投影法の歪み_1》ダヴィデ・ボリアーニ《磁力の平面》は、磁石と鉄の削り屑を使ったもの。
スイッチを入れると鉄屑がゆっくりと動いていきますが、その動きはかなり微細。見逃さないように、目をこらしてご覧ください。
ダヴィデ・ボリアーニ《磁力の平面》筆者イチオシは、グルッポMID《円形マトリクスの発生装置2》。黒い点が付いた円盤を回すだけですが、ご覧の通りです。
黒い点の不思議な動きは、円盤上の点が移動する速度と、内部の照明の点滅が作用するためです。
グルッポMID《円形マトリクスの発生装置2》ここにはプロジェクションマッピングもAR(拡張現実)もありませんが、アナログのアイディアを駆使した作品群は逆に新鮮に思えます。時代的には現代美術の範疇に入りますが、難解なコンセプトはありません。理屈抜きでお楽しみください。
山梨県立美術館から巡回してきた本展。東京展の後は少し開きますが、広島展(2015年4月11日~6月24日
ふくやま美術館)、埼玉展(2015年7月4日~9月6日
埼玉県立近代美術館)と巡回します。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年7月7日 ]■キネティック・アート展 に関するツイート