丸顔で紡錘形の大きな眼の少女や、鳥、魚、塔などのモチーフ。南桂子は詩情あふれる銅版画で知られています。
1950年代からユニセフのグリーティングカードやカレンダー、ニューヨーク近代美術館のクリスマスカードに図柄が採用されるなど、南桂子は国際的な銅版画家として活躍しました。谷川俊太郎や福永武彦の装画などを手がけているため、作者の名前は知らなくても作品を目にした方は多いのではないでしょうか。近年においても再び注目を集めており、ネットで作品集に共感の声が広がるなど、主に若い女性を中心に静かな人気を呼んでいます。
アメリカ時代南桂子は1911年に現在の富山県高岡市で出生。少女時代から詩作や絵画制作に親しんで過ごしました。銅版画を手掛け始めたのは49年、後に夫となる浜口陽三との出会いがきっかけです。54年に二人はパリに渡り、本格的に銅版画技法を習得。56年には作品を仏文化省が買い上げ、58年には「平和の木」がユニセフのグリーティングカードに採用されるなど、世界的に高い評価を受けるようになりました。82年には浜口陽三に続いてサンフランシスコに移住。晩年に帰国して2004年に93歳で死去するまで、国内外で活躍しました。
展覧会場今回の展覧会は南桂子の生誕100年を記念して、その画業を総合的に捉えなおすものです。今まであまり紹介されてこなかった渡仏前の東京時代の作品紹介をはじめ、版画と原版を並べた展示、他館が所蔵するデッサンと版画を合わせて見せる展示などで、南の作品を多面的に考察。制作年別に五章で作品を紹介し、作風の変遷をじっくりと楽しむ事ができます。前期は9月13日(火)まで、 後期は9月17日(土)~10月10日(月・祝)で、前後期で作品入れ替えがあります。
展覧会場
吉祥寺の街中にある
武蔵野市立吉祥寺美術館は、2002年の開館。市立美術館としては珍しい商業ビルの7階という立地で、小ぶりながらも“観る・創る・育てる”をモットーに市民に愛されるユニークな美術館活動を行っています。多摩地区の13館が連携して行っている「たまわーるラリー2011」にも参加中(2011年8月6日~11月30日)。複数館をまわってシールを集めると、抽選でエコバッグやダイヤリーがもらえます。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2011年8月19日 ]