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    レポート
    微笑みに込められた祈り 円空・木喰展
    そごう美術館(横浜駅東口 そごう横浜店 6階) | 神奈川県
    定説を覆す新発見も
    江戸時代の造仏聖、円空(えんくう:1632-1695)と木喰(もくじき:1718-1810)。日本各地を巡って多くの仏像・神像を残し、個性的な微笑みをたたえた像は、庶民の静かな信仰の中で深く愛されてきました。あわせて約250点を展覧、首都圏の美術館では初の試みです。
    (左から)木喰《秩父三十四所観音菩薩のうち》金毘羅堂(新潟・長岡市) / 木喰《子安観音菩薩(立木仏)》光明寺(愛媛・四国中央市)
    (左から)円空《十一面観音菩薩》田舎館村(青森・田舎館村) / 円空《十一面観音菩薩》真教寺(三重・津市) / 円空《十一面観音菩薩》宗福寺(秋田・大館市)
    (左から)円空《馬頭観音菩薩》《熱田大明神》《天照皇太神》龍泉寺(愛知・名古屋市) / 円空《観音菩薩》寒窓寺(岐阜・海津市) / 円空《観音菩薩(伝 薬師如来)》萬林寺(岐阜・美濃市) / 円空《薬師如来/阿弥陀如来(両面仏)》明福寺(三重・三重郡菰野町) / 円空《大黒天》(個人蔵、一宮市博物館寄託)
    円空仏の数々
    (手前の3体)円空《不動三尊》清瀧寺(栃木・日光市)
    木喰仏の数々
    (左手前)木喰《釈迦如来》海傳寺(青森・上北郡六戸町) 定説を覆す新発見となった、木喰の最初期の像
    (手前)木喰《恵比寿》宝蔵院(愛知・名古屋市)
    木喰《十二神将》西光寺(新潟・柏崎市) 長い顎鬚をはやしているのは、おそらく木喰が自身を紛れ込ませたもの
    美濃(岐阜県)生まれの円空と、甲斐(山梨県)生まれの木喰。活躍した時代はほぼ100年違いますが、穏やかな表現の像が庶民の暮らしに受け入れられたさまは、相通じるところがあります。

    展覧会は年代順で、まず円空です。円空は32歳から造像を始め、生涯で12万体を彫ったとも言われています(確認されているのは5400体余です)。

    会場には巨大な像から、円空仏ならではの木端仏(こっぱぶつ:文字通り捨て去るような木片に刃跡をつけて仏像にしたもの)まで、ずらり。展覧会初出展の像が多数あるのも、見どころのひとつです。


    円空仏の数々 動画最後は、新発見の《宇賀弁財天》(江島本町自治会、鈴鹿市寄託)

    清瀧寺(栃木・日光市)の《不動三尊》は、円空の造形感覚がよく現れた像。中央の不動明王は、朽木をそのまま火焔光背として利用しています。手を上げた矜羯羅(こんがら)童子、宝棒が右端にある制多迦(せいたか)童子(普通は宝棒は中央)も、円空ならではの発想です。

    明福寺(三重・三重郡菰野町)の《薬師如来/阿弥陀如来(両面仏)》は、一木の両面に二尊を彫った珍しい像。現世(薬師)と来世(阿弥陀)の両方を守ってもらえる事となります。


    順に、《不動三尊》清瀧寺(栃木・日光市)、《薬師如来/阿弥陀如来(両面仏)》明福寺(三重・三重郡菰野町)

    続いて木喰。像を彫り出したのは61歳になってからで、93歳で亡くなるまでひたすら造像に励みました(確認されているのは720体)。

    これまで木喰は、北海道に渡った時から造像を始めたとされていましたが、本展の準備中に、それより前に制作された像を青森で発見。定説を覆す貴重な作例です。

    会場後半には、現存する木喰仏の最後の像も展示されているので、木喰の最初期から最晩年までの像が揃った事になります。


    木喰仏の数々 順に木喰最初期の像《釈迦如来》海傳寺(青森・上北郡六戸町)と、最晩年の像《阿弥陀如来》慈雲寺(長野・諏訪郡下諏訪町)

    自身を象った「自身像」が15体確認されている木喰。ふっくらとした顔つきで、微笑みをたたえた表情が特徴的です。

    中には顔がすり減って、のっぺらぼうになった自身像も。新潟・長岡市の金毘羅堂に伝わる自身像で、なんと子どもたちがソリにして使っていたため、すり減ってしまったそうです。

    自身像とはいえ、寺の像をソリにするとはかなり大胆ですが、庶民の暮らしの近くにあった木喰像のあり方としては象徴的ともいえます。


    順に、《自身像》日本民藝館(東京・目黒区)、《自身像》《十王尊》《葬頭河婆》《白鬼》東光寺(兵庫・川辺郡猪名川町)、《秩父三十四所観音菩薩のうち 自身像》金毘羅堂(新潟・長岡市)

    ほんのりと木の香りが漂う会場。ケースに入っていない仏像も多いので、近くまで寄ってノミ跡まで堪能できる嬉しい展覧会です。

    横浜展の後は山梨展(3/28~5/18 山梨県立博物館)、名古屋展(6/13~7/12 松坂屋美術館)、岡山展(7/17~8/23 岡山県立美術館)に巡回します。
    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年2月9日 ]

    円空と木喰 (NHK美の壺)円空と木喰 (NHK美の壺)

    NHK「美の壺」制作班 (編集)

    日本放送出版協会
    ¥ 1,026


    ■円空・木喰展 に関するツイート


     
    会場
    会期
    2015年2月7日(土)~3月22日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~20:00(入館は閉館の30分前まで)
    ※そごう横浜店の営業時間に準じる
    休館日
    そごう横浜店の休業日に準じる
    住所
    神奈川県横浜市西区高島2-18-1
    電話 045-465-5515
    公式サイト https://www.sogo-seibu.jp/common/museum/archives/14/enku_mokujiki/
    料金
    大人1,000円(800円)、大学・高校生800円(600円)、中学生以下無料
    ※消費税含む。
    ※( )内は前売および20名さま以上の団体料金。
    ※障害者手帳をお持ちの方、およびご同伴者1名さまは( )内の料金にて
     ご入館いただけます。
    展覧会詳細 微笑みに込められた祈り 円空・木喰展 詳細情報
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