昨年5月に開催された「公募団体ベストセレクション 美術 2014」展に出品された27の団体から推薦された57名の新鋭作家のうち、審査を経て選ばれた5名。まずご紹介するのは瀬島匠さん(1962年生)です。
造船の町、因島で生まれ育った瀬島さん。本展のために制作した巨大な新作も海がモチーフですが、赤富士のようにも見えます。石膏やボンドを使った盛り上げで、力強さが迫ってきます。
瀬島匠さんの作品髙島圭史さん(1976年生)は日本美術院の特待。2012年の再興第97回院展で日本美術院賞(大観賞)を受賞しました。
光の表現を制作の課題にしている髙島さん。顔料ならではの細やかな色彩感覚は、図録やウェブでは伝わりにくいかもしれません。ぜひ会場でご覧ください。
髙島圭史さんの作品人と馬が合体した不思議な彫刻は、日本彫刻会の田丸稔さん(1968年生)の作品。いずれも《叙事詩の男と馬》のシリーズです。
いかにも彫刻的な素材である馬は、「登山家にとってのエベレストのようなもの」という田丸さん。ダイナミズムと存在感は、彫刻ならではの魅力です。
田丸稔さんの作品ローマから帰国後、まっすぐ会場を訪れた高松和樹さん(1978年生)。瀬島さんと同様に独立美術協会の会員で、仙台を拠点に活躍しています。
モノトーンの作品は、現代のコミュニケーションツールであるSNSや掲示板がテーマ。性別も年齢も分からない匿名性を、2色のグラデーションで表現しています。
高松和樹さんの作品版画で選ばれたのは、日本版画協会の山田彩加さん(1985年生)。本展では最年少、20代の作家です。
銅版画のようにみえる作品ですが、リトグラフ(石版画)による制作。コンセプトは「命の繋がり」で、大学での美術解剖学講義で、異なる生物で形態が類似する事に感銘を受けたため、と言います。
山田彩加さんの作品ジャンルを横断して意欲にあふれた新鋭作家を楽しめる企画は、公募団体とともに歩んできた東京都美術館ならでは。
2013年、
2014年の「都美セレクション 新鋭美術家」展もこの項でご紹介しましたが、今回も楽しませていただきました。
来年度の「公募団体ベストセレクション 美術 2015」展は、2015年5月4日(月・祝)~27日(水)に開催されます。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年2月18日 ]