1994年から開催されている「秘蔵の名品 アートコレクション展」。これまでに51万人以上が来場、約1億7,200万円を社会貢献のために寄付しているチャリティーイベントです。
今回のテーマは「宴」。普段は鑑賞する機会が少ない企業・団体・個人が所有する「宴」を描いた貴重な作品60件が、
ホテルオークラ東京本館の「平安の間」にずらりと並びます。
会場は三章構成、第1章は「奏でる」です。宴に欠かせない、美しい音色。笙(しょう)や篳篥(ひちりき)などの古楽器、お馴染みの琴や三味線、そして明治以降の絵画にはピアノやヴァイオリン、トランペットなどの西洋楽器も登場します。
第1章「奏でる」第2章は「舞い踊る」。宴に踊りはつきもの。世界にはそれぞれの文化を代表する踊りがあります。
本展では舞楽、能、歌舞伎、田楽踊りなど、日本の伝統的な舞踏を描いた作品を中心に紹介。小磯良平《バレリーナ》、マティス《ジャズ》など洋画の名品も紹介されていますので、あわせてお楽しみ下さい。
第2章「舞い踊る」展覧会のメインビジュアルが《アレ夕立に》(髙島屋史料館)。扇で顔を隠した「顔を描かない美人画」は、京画壇の大家、竹内栖鳳が明治42(1909)年に文展に出品した作品です。
これまで「秘蔵の名品 アートコレクション展」は別館地下2階のアスコットホールで開催され、「平安の間」での開催は2005年以来2回目。
ホテルオークラ東京本館のなかで最も大きく豪華なこの場所での開催で、しかもテーマが「宴」という事で、白羽の矢が立ったのがこの作品でした。
踊りのポーズをビシッと決めた、栖鳳渾身の大作。「この作品の出品なくして、本展はありえませんでした」(監修の熊澤弘氏)という、まさに展覧会を象徴する作品です。
竹内栖鳳《アレ夕立に》(髙島屋史料館)第3章は「集う」。華やかな宴席に集った人々。人が集う場には装飾としての美術が生まれ、また人々を集めるために作られた美術も数多く存在します。
ここでは、宴の空間を華やかに彩る豪華な金屏風などを紹介。宴に相応しく、縁起の良い画題を用いた作品も目にとまります。
第3章「集う」「西欧の模倣ではなく日本独自のホテル」を目指し、1962年に開業した
ホテルオークラ東京本館。本年8月末で営業休止し、9月から別館のみ営業を継続するとともに、約3年半の建替え工事に入ります。伝統的な紋様から着想したという名建築を見られるのもあとわずかです。お見逃しなく。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年8月3日 ]■ホテルオークラ東京 美の宴 に関するツイート