新設される富山県美術館(略称はTAD:タッド)。富山には1981年に開館した富山県立近代美術館がありましたが、施設の老朽化に加え消火設備の問題もあって、新しい美術館が建設される事となりました。
立地は、富山県富岩(ふがん)運河環水公園。前方には水辺、背後には立山がそびえる美しいロケーションです。内藤廣さんが設計した建物は、水辺に面した東側が一面はガラス張りになっており、明るく開放的な印象を受けます。
館は3階建てで、1階はエントランスのロビーやギャラリーなど。災害への備えもあり、展示室は上層の2階・3階に設定されました。
2階はコレクション展を行う展示室1・2と、企画展を行う展示室3・4。壁面や天井のアルミ、通路の杉材など、内外装には県産の素材が使われています。
3階にはポスターと椅子を中心に紹介する展示室5と、富山県出身の美術評論家・瀧口修造と、世界的な音楽家シモン・ゴールドベルクのコレクションを紹介する展示室6。ワークショップが開かれるアトリエや、日本橋「たいめいけん」が出店するレストランも3階です。
人気を集めそうなのが、所蔵するポスターをタッチパネルで拡大表示できるディスプレイと、体の動きで光のアートを創り出すインタラクティブアート(ともに3階)。屋上には佐藤卓さんがデザインした遊具も設置されますが、残念ながら取材時は工事中。これはオープン時のお楽しみ、です。
開館準備が進む富山県美術館あまり知られていませんが、実はミュージアムが充実している富山。富山市内にあるミュージアムをいくつかご紹介いたします。
新設の県美術館とともに、もうひとつの県立美術館である富山県水墨美術館。砺波市出身の下保昭をはじめ、竹内栖鳳や横山大観ら近代日本画を所蔵。館名は「水墨」ですが、水墨画以外の日本画も多数あります。数奇屋建築の第一人者といわれた中村外二が最晩年に手掛けた茶室・墨光庵も備えています。
貴重な文化遺産をミュージアムとして活用したのが、樂翠亭(らくすいてい)美術館。元は昭和25~32年に建てられた邸宅で、趣がある館内では古美術から若手作家の作品までさまざまの企画展を開催。「樂翠」は緑を楽しむという意味で、庭園も見どころのひとつ。特徴的なロゴは佐藤可士和さんによるデザインです。
高志の国文学館は、2012年開館と新しいミュージアム。高志の国:こしのくに=越国で、富山を含む北陸地方一帯を示します。文学はもちろん、藤子・F・不二雄、藤子不二雄Aら漫画家も含め、富山県ゆかりの作家・作品を紹介。企画展も開催しており、現在は「官人 大伴家持-困難な時代を生きた良心」です(6月5日まで)。
さらに新しいのが、2016年6月にオープンしたばかりの森記念秋水美術館。リードケミカル(株)代表取締役の森政雄氏が収集してきた日本刀を中心に展示しています(「秋水」は日本刀の事です)。指定文化財をはじめとする名刀の展示室は圧巻、照明にも気を配り、美しい刃紋を心ゆくまでお楽しみいただけます。
また、ミュージアムではありませんが、富山県美術館が建つ富岩運河環水公園には「世界一美しいスタバ」もあります。世界一かどうかはともかく、夜景はなかなかでした。
富山市内のミュージアムいずれも富山駅から徒歩圏内ではありますが、移動にはレンタサイクル「シクロシティ」が便利。市内各所にある「ステーション」で自転車を借り、別の「ステーション」で返却。1回の利用が30分以内なら、何度使っても1日わずか150円です
何かにつけて派手な金沢に比べると、いささか印象が薄い富山ですが、ご紹介したように実は文化面も魅力たっぷり。8月26日(土)の富山県美術館全面開館が楽しみです。富山まで、東京駅から新幹線で2時間強です。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年3月23-24日 ]■富山県美術館 に関するツイート