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    レポート
    古代アンデス文明展
    国立科学博物館 | 東京都
    9つの文化を紹介
    南米大陸の太平洋岸で発展したアンデス文明。時間的には約5000年間、距離は南北4000km、標高差4500mに及び、巨大で複雑な文明の全体像を把握するのは容易ではありません。いまだに多くの謎が残る古代アンデス文明を、黄金製品や土器、ミイラなどの約200点の貴重な資料で紹介する展覧会が、国立科学博物館で開催中です。
    《同じ人物の人生の3つの時期の顔を表現した肖像土器》モチェ文化 ラルコ博物館蔵
    (左から)《交差した手(男の手)》 / 《交差した手(女の手)》 ともにレプリカ 先土器時代後期 東京大学総合研究博物館蔵
    《自身の首を切る人物の象形鐙型土器》クビスニケ文化 ペルー文化省・国立チャビン博物館蔵
    (左から)《2匹の魚が描かれた土製の皿》 ペルー文化省・イカ地方博物館蔵 / 《縄をかけられたラクダ科動物(リャマ?)が描かれた土製の皿》 ディダクティコアントニーニ博物館蔵 ともにナスカ文化
    (左から)《「杖を持つ神」が描かれた多彩色鉢》 ペルー文化省・国立考古学人類学歴史学博物館蔵/ 《杖を持つ神が描かれた多彩色壺》 ペルー文化省・アヤクチョ地方歴史博物館蔵 ともにワリ文化
    (左から)《鉢形の金の器》後期シカン文化 / 《打ち出し技法で装飾をほどこした金のコップ(アキリャ)5点セット》中期シカン文化 / 《細かい細工がほどこされた金の装飾品》後期シカン文化 / 《金の胸飾り》シカン文化 すべてペルー文化省・国立ブリューニング考古学博物館蔵
    《ロロ神殿「西の墓」の中心被葬者の仮面と頭骨》中期シカン文化 ペルー文化省・国立シカン博物館蔵
    (左から)《木製柱状人物像》 ペルー文化省・チャンチャン遺跡博物館蔵 / 《人間をかたどった祭祀用の杯(容器)》 リマ美術館蔵 / 《木製のミニチュア建築物模型》 ペルー文化省・モチェ神殿群博物館蔵 / 《木製の葬送行列のミニチュア模型》 ペルー文化省・モチェ神殿群博物館蔵 すべてチムー文化
    《ミイラ》ワリ文化 ペルー文化省・国立考古学人類学歴史学博物館蔵
    古代アンデスといえば、ナスカの地上絵と、マチュ・ピチュで知られるインカ、一般的にはこのぐらいと思います。本展では9つの文化を紹介。日本ではあまり知られていなくとも、アンデス文化史では重要な位置を占める文化にも焦点を当てました。

    アンデスに人類が到達したのは、紀元前1万3000年頃。カラル文化(紀元前3000年頃~前2000年頃)では、未焼成の土偶を使った儀式が行われていたようです。

    紀元前1300年頃~前500年頃のペルー北部山岳地域で興ったのがチャビン文化。石彫の神像は、石造りの壮大な建造物がつくられた後の文化にも繋がります。

    モチェ文化(紀元200年頃~750/800年頃)は、ユニークな彩色土器が見もの。ナスカ文化(紀元前200年頃~紀元650年頃)もほぼ同時期ですが、北と南に離れている事もあって、文化的には異なります。


    序章「人類のアンデス到達とその後の生活」、1章「アンデスの神殿と宗教の始まり」、2章「複雑な社会の始まり」、3章「さまざまな地方文化の始まり」

    続いて、インカ帝国の基礎になった文化について。

    ティティカカ湖周辺で発展したのが、高度な石造建築技術を持つティワナク文化(紀元500年頃~1100年頃)。ワリ文化(紀元650年頃~1000年頃)も同じ高地で共存。儀式で用いられたと見られる巨大な壺や鉢が目をひきます。

    日本人考古学者の島田泉教授が発見したシカン文化(紀元800年頃~1375年頃)。優れた金属精錬技術から、黄金の装飾品が生み出されました。


    4章「地域を超えた政治システムの始まり」

    アンデス文明の最後は、二つの勢力の覇権争い。北部ではシカンの衰退後にチムー王国(紀元1100年頃~1470年頃)が台頭。発展し続けたアンデスの先住民文化の頂点に達したのがインカ帝国(紀元15世紀前半~1572年)ですが、わずか168名のスペイン人の侵略によって崩壊してしまいました。

    時代に沿った文化の紹介はここまでですが、最終章は古代アンデス文明の身体観について。長い間、旧大陸と隔絶されていたこの地には、独自の身体加工の風習が見られました。幼児期から人工的に行われる頭蓋変形、頭骨に穴を開ける頭蓋穿孔術、そして極端に乾燥した地域ゆえのミイラなど、私たちとはかなり異なる文化が見てとれます。


    5章「最後の帝国―チムー王国とインカ帝国」、「6章「身体から見たアンデス文明」

    展覧会は、1994年に国立科学博物館で開催した「黄金の都シカン発掘展」以来、2012年「インカ帝国展‐マチュピチュ『発見』100年」まで5回の展覧会を開催してきた「TBSアンデス・プロジェクト」の集大成。かなり広範囲ですが、これさえ見れば古代アンデスの概略はバッチリです。

    展覧会は全国巡回。東京展の後は2018年3月21日(水)~5月6日(日)に新潟県立万代島美術館は決定。その後も2019年9月まで各地を巡回する予定です。会場と会期は判明次第、こちらでご案内いたします。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年10月20日 ]

    古代アンデス 神殿から始まる文明古代アンデス 神殿から始まる文明

    大貫 良夫 (著), 加藤 泰建 (著), 関 雄二 (著)

    朝日新聞出版
    ¥ 1,512


    ■古代アンデス文明展 に関するツイート


     
    会場
    会期
    2017年10月21日(土)~2018年2月18日(日)
    会期終了
    開館時間
    9:00~17:00(入館は16:30まで)
    ※当面の間、常設展示の夜間開館(金曜日・土曜日 17:00~20:00)は休止いたします。
    休館日
    毎週月曜日、12/28~1/1、1/9 ※1/8(月)、2/12(月)は開館
    住所
    東京都台東区上野公園7-20
    電話 03-5777-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト http://andes2017-2019.main.jp/andes_web/
    料金
    一般・大学生 1,600円/小・中・高校生 600円/金曜・土曜限定ペア得ナイト券 2000円
    展覧会詳細 古代アンデス文明展 詳細情報
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