1937年から本格的に絵画収集をはじめたビュールレ。コレクションは邸宅の隣の別棟に飾られ、ビュールレが没した後は一般にも公開さていましたが、2008年に4点の絵画が盗まれる事件が発生。以降は一般公開が規制され、2020年には全コレクションがチューリヒ美術館に移管されることが決まっています。
会場は10章構成。17世紀のフランス・ハルスから20世紀のパブロ・ピカソまで紹介されていますが、主軸は印象派とポスト印象派の作品です。
展覧会リーフレットで「絵画史上、最強の美少女(センター)。」と紹介されているが、ルノワールの《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)》。モデルは裕福な銀行家の長女で、当時8歳。頬の微妙な表現は見事です。ビュールレは1949年にこの作品を、イレーヌ本人から購入しています。
第1章~第5章第6章でフォーカスされているのがポール・セザンヌ。ビュールレは1950年代にコレクションの大部分を築きましたが、この時期に脚光を浴びていたのがポスト印象派。ビュールレも強い関心を寄せ、特にセザンヌとファン・ゴッホについては、初期から成熟期までの作品を網羅的に収集しています。
《赤いチョッキの少年》は、セザンヌの代表作のひとつ。少年の右手は長すぎますが、絵画のバランスは完成されています。ちなみにこの作品は、前述の事件で盗まれた作品のひとつ。盗まれてから4年後に、無事発見されました。
会場最後のクロード・モネ《睡蓮の池、緑の反映》は、200x425cmの大作。このコーナーは一般の方も写真撮影が可能です(フラッシュ・一脚・三脚・自撮り棒は不可、動画撮影も不可)。
第6章~第10章日本では松方幸次郎や大原孫三郎が1910年代からフランス近代絵画を収集している事を見ても、ビュールレが絵画収集を始めたのは決して早くはないのですが、わずか20年で一大コレクションに。的確な判断と類まれなる情熱があったからこそといえるでしょう。
出展作品の約半数は日本初公開という貴重な展覧会です。ヨーロッパ美術好きにはたまらない、ビッグネームばかりの豪華なラインナップをお楽しみください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2018年2月13日 ]■至上の印象派展 ビュールレ・コレクション に関するツイート