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    レポート
    光琳と乾山 ―芸術家兄弟・響き合う美意識―
    根津美術館 | 東京都
    「もう一人の芸術家」にも注目
    根津美術館で、毎年この時期に展示されている国宝《燕子花図屏風》。今年は作者の尾形光琳と、その弟の乾山という、美術史上でも稀な兄弟にスポットを当てた企画展です。乾山焼に絵付けをしたことが確実になった「もう一人の芸術家」にも注目です。
    (左から)《夏草図屏風》尾形光琳筆 江戸時代 18世紀 根津美術館蔵 / 国宝《燕子花図屏風》尾形光琳筆 江戸時代 18世紀 根津美術館蔵
    (左から)《寿老人図》尾形光琳筆 江戸時代 18世紀 個人蔵 / 《兼好法師図》尾形光琳筆 江戸時代 18世紀 MOA美術館蔵
    重要文化財《銹絵寒山拾得図角皿》尾形乾山作・尾形光琳画 江戸時代 18世紀 京都国立博物館蔵
    (左から)《和歌懐紙》尾形乾山筆 1幅 紙本墨書 江戸時代 18世紀 根津美術館蔵 / 《六首歌》尾形乾山筆 1幅 紙本墨書 元文5年(1740) 大和文華館蔵
    (左から)《定家詠十二ヶ月和歌花鳥図 九月》尾形乾山筆 寛保3年(1743) 根津美術館蔵 / 《定家詠十二ヶ月和歌花鳥図 八月》尾形乾山筆 寛保3年(1743) 個人蔵 / 《定家詠十二ヶ月和歌花鳥図 二月》尾形乾山筆 寛保3年(1743) 個人蔵
    (左から)《紅葉に菊流水図》尾形乾山筆 江戸時代 18世紀 東京国立博物館蔵 / 《桜に春草図》尾形乾山筆 江戸時代 18世紀 東京国立博物館蔵
    (左から)《色絵桔梗図角皿》尾形乾山作 江戸時代 18世紀 根津美術館蔵 / 《色絵紫陽花図角皿》尾形乾山作 江戸時代 18世紀 根津美術館蔵
    重要文化財《銹絵染付金彩薄文蓋物》尾形乾山作 江戸時代 18世紀 サントリー美術館蔵
    《色絵夕顔文茶碗》尾形乾山作 江戸時代 18世紀 大和文華館蔵
    尾形光琳が手掛けた傑作、国宝《燕子花図屏風》。知名度や人気の高さは、今さら説明するまでもないでしょう。今年秋には、パリ・エッフェル塔をライトアップするプロジェクトで映像として投影されるとのニュースも(詳しくはこちら)。まさに日本美術の顔といえる存在です。

    今回の展覧会は、展示室1の「光琳の絵画」から。会場入ってすぐの右奥に、国宝《燕子花図屏風》が展示されるのは、ちょっと珍しい構成です。

    手前にある《秋草図屏風》とは、彩色の仕方などにかなりの差異があります。《夏草図屏風》との比較では、同じカキツバタが描かれていますが、夏草図のほうが写実的です。

    装飾性が高い彩色画に対し、文人趣味が強く感じられるのが水墨画。新出の《寿老人図》はユーモラスな表現です。


    「光琳の絵画」

    隣の展示室2は「乾山の書画」。乾山は、光琳とは5歳違いの弟。陶工として有名ですが、ここでは絵画が紹介されています。

    一見では素人っぽく見える、乾山の絵画。むしろ稚拙さを恥じる事なく、それを美と誇るような伸びやかさも特徴的です。

    多くの絵には自賛も添えられ、書画一致の世界をつくっています。


    「乾山の書画」

    2階の展示室5は「乾山のやきもの」。多様な作品の中から、今回は「絵」をキーワードにした作品が並びます。

    注目は、乾山焼と画家・渡辺始興の関わりについて。展示されている《銹絵蘭図角皿》の裏に「表の一連は渡辺素信が書いた」と記されています。それまで「一連」は蘭の絵だと考えられていましたが、近年の研究で、傍らの漢詩を指すのでは、という解釈が発表。渡辺始興の書との類似性が認められ、渡辺素信=始興と判明しました。この結果、角皿は絵・漢詩ともに始興によるものとされ、本展から「尾形乾山作、渡辺始興画賛」として展示されています。

    はじめ狩野派に学び、後に光琳を師にしたと伝えられている渡辺始興。円山応挙が私淑していたという実力者ですが、乾山焼との関わりが確実になった事で、この後も新たな研究が進みそうです。


    「乾山のやきもの」

    根津美術館の庭園のカキツバタも、順調に開花中。例年は5/1頃が満開になりますが、今年は少し早めかもしれません。

    展覧会を見た後、庭園内のNEZU CAFEでひとやすみ。庭園に下りて本物のカキツバタを見た後に、再び《燕子花図屏風》を鑑賞が、おすすめコースです。5/8~13は19時まで開館しています。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2018年4月13日 ]

    光琳乾山兄弟秘話光琳乾山兄弟秘話

    住友 慎一(著)

    里文出版
    ¥ 798


    ■光琳と乾山 に関するツイート


     
    会場
    会期
    2018年4月14日(土)~5月13日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~17:00(入館は16:30まで)
    休館日
    月曜日(ただし、4月30日は開館)
    住所
    東京都港区南青山6-5-1
    電話 03-3400-2536
    公式サイト http://www.nezu-muse.or.jp
    料金
    一般 1,300(1,100)円、学生 1,000(800)円

    ※( )内は20名以上の団体、障害者手帳提示者および同伴者1名の料金。
    ※中学生以下は無料
    展覧会詳細 光琳と乾山 ―芸術家兄弟・響き合う美意識― 詳細情報
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