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    レポート
    没後150年記念「破天荒の浮世絵師 歌川国芳」
    太田記念美術館 | 東京都
    骸骨から猫まで、江戸の凄腕デザイナー
    今年は歌川国芳の没後150年にあたり、各地で特別展が企画されています。浮世絵美術館の第一人者でもある東京・神宮前の太田記念美術館でも、2011年6月1日から記念展が開幕しました。概念を打ち破る大胆な構図、爆笑必須のユーモラスな題材。肩肘張らずにどうぞ。
    相馬の古内裏(個人蔵) [前期展示] 正確に描かれた骸骨は、西洋の解剖学所を参考にしたのでしょうか。見事な構図で評価が高い1枚です。
    役者絵3点。右手前の「野栖悟助」の着物は恐ろしいドクロ模様ですが、よく見るとドクロは猫があわさったものになっています。
    「国芳芝居草稿(部分)」。人物の下絵が多数描かれた画巻で、現代のクロッキー帳といえるものです。簡略的に描きながらも国芳の恐るべきデッサン力が見て取れます。
    館内風景。展示は1階、2階、地下1階の3フロアで。館内には靴を脱いで上がります。
    肉筆画のコーナー。国芳の肉筆画は殆ど残っていないという貴重なもの。奥の2点は弟子による国芳の肖像。
    太田記念美術館外観。ラフォーレ原宿の裏手になります。
    今回のオミヤゲは迷いました。ポストカードは何枚でも欲しくなりますが、キリがないので厳選して猫ばかりを4枚(各100円)。A4両面のクリアファイル(650円)は、右下の酔っ払いがお気に入りです。
    江戸時代末期を代表する浮世絵師の一人、歌川国芳。「北斎や広重は知っているけど、歌川国芳?」という方も、ご心配なく。実は国芳は、浮世絵の専門家からも十分な評価を受けていたとはいえません。その造形性や風刺精神は近年になって見直されており、若者たちからも大きな支持を受けるようになりました。2009年にはロンドンのロイヤル・アカデミー・オブ・アーツで、2010年にはニューヨークのジャパン・ソサエティー・ギャラリーで大規模な展覧会も開催され、大反響を呼んでいます。

    歌川国芳は1797年生まれ。実は広重と同い年です。18歳でデビューしたものの、浮世絵師としては最初はヒット作に恵まれず、不遇の時代を過ごしていました。転機が訪れたのは31歳の時に描いた、水滸伝の武者絵シリーズ。閉塞感が漂っていた当時の空気を打ち破るような力感あふれる武者絵は、たちまち江戸っ子の心を捉えました。その後、三枚続きのワイド画面を生かしたダイナミックな作品を次々に発表。1853年の人気ランキングでは1位・歌川豊国、2位・国芳、3位・広重と記されています。

    国芳の作品は、おどろおどろしい妖怪が画面いっぱいに描かれる妖怪画、擬人化された猫や金魚がユーモラスな戯画・狂画など、我々がイメージしている情緒的な浮世絵とはちょっと違います。ひと目で観客の心を捉えるべく考えられており、まさに超一流の商業デザイナーだったといえるかもしれません。

    その一方で、実は国芳は大変な努力家でもあり、水滸伝がヒットした後も、武者が同じ顔になるのを恐れてスケッチを怠らなかったといいます。その一端が伺えるのが、今回初公開となった「国芳芝居草稿」。人物を描くことに対しての執念が伝わってくるような、恐るべき画力を見せてくれます。

    「国芳芝居草稿」から。手ぬぐいにして売って欲しいです…

    「顔が平らだったから『ヒラヒラ』というあだ名があった」「猫が大好きで懐に何匹か入れたまま絵を描いていた」「典型的な江戸っ子で、火消し達とも仲がよかった」…。楽しい逸話も多い、歌川国芳。今回の展覧会は、武者絵や妖怪画からなる【前期 豪快なる武者と妖怪】(2011年6月1日~6月26日)と、戯画や洋風画からなる【後期 遊び心と西洋の風】(2011年7月1日~7月28日)という二部構成。前期と後期で全ての作品が展示替えされますので、両方とも見逃せません。


    最後に、太田記念美術館をご紹介します。渋谷区神宮前の太田記念美術館は、浮世絵専門の私設美術館。五代太田清藏が昭和の初めから半世紀以上に渡って蒐集した約1万2,000点を基に、昭和55年(1980年)に開館しました。さまざまなテーマによる展示活動を行うとともに、毎年、浮世絵研究助成事業を行うなど調査研究活動も盛ん。海外の美術館との交流も盛んに行っています。ラフォーレ原宿のすぐ裏という恵まれた立地ですので、ショッピングがてら足をお運びください。
    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2011年5月30日 ]
     
    会場
    会期
    2011年6月1日(水)~7月28日(木) [前期:6月1日~6月26日/後期:7月1日~7月28日]
    会期終了
    開館時間
    10:30~17:30(入館17:00まで)
    休館日
    月曜日(祝日の場合開館し翌日休館)、年末年始、展示替え期間
    住所
    〒150-0001 東京都渋谷区神宮前1-10-10
    電話 03-5777-8600
    公式サイト http://www.ukiyoe-ota-muse.jp
    展覧会詳細 没後150年記念「破天荒の浮世絵師 歌川国芳」 詳細情報
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