国立民族学博物館 特別展「見世物大博覧会」
撮影・文 [エリアレポーター]
胤森由梨 / 2016年9月7日
現在ではネガティブなイメージもある「見世物」という言葉ですが、以前は私たちの生活の近くにある、身近な存在でした。この展覧会では、私たちを楽しませてくれた見世物を、さまざまな資料を通じて紹介していきます。
展覧会は「見世物を生み出す人間のカラダ」「見世物が繰り広げられていたトコロ」「見世物として使用されてきたモノ」という3つの観点で構成。そして最後には、見世物が現在の博物館や演劇や映画などに与えた影響についても解説されています。
会場には実際の見世物小屋に見立てた入り口や、入り口に据えられた「グラシ」(客をつかむネタ)等も展示。まるで本物の見世物小屋のような雰囲気です。
小屋の中に入ってみると…、
絵看板(右上)や、仕掛けを使って客をよびこむためのネタもの(左)が展示されています。
奥に進むと、大正時代に旗揚げされた安田興行社の2代目、安田里美さんの人間ポンプが上演されています。
軽業や曲芸、大刀芸なども、人間のカラダに関わる見世物です。これらは、全国各地で行われる民俗芸能にも影響を与えています。
また、こうした身体技芸は、明治以降に外国からサーカスが入ってきた事でその技を取り入れるなど、時代とともに変わっていった事も分かります。
見世物小屋に欠かせない、細工や人形などの珍しい品々。日常的な素材を使って珍妙な造形をつくる事で、人々の好奇心を刺激していきました。
大きな武将像は、籠細工興業の「関羽」をもとに制作されたもの。竹で籠目を編んで彩色を施していますが、実際に使われていたものは、高さが二丈六尺(約7.9m)もあり、この展示よりずっと巨大な人形でした。
今では珍しくないヒョウやトラも、江戸時代に外国から入ってきた時には、見世物として各地で興業が行われ人気を博しました。中でも一番人気だったのは、ラクダでした。展示ケースの中には、当時の動物を使った見世物の様子が描かれた図版が展示されています。
ちょっと余談ですが、インコやオウムといった当時では珍しい鳥を使った見世物興行も行われ、現在の猫カフェならぬ、鳥茶屋なるものもあったそうです。
見世物とカラダ、見世物とトコロ、見世物とモノ。3つに共通するのは、人々をあっと驚かせる力です。ぜひ会場で体感してみて下さい。
エリアレポーターのご紹介
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胤森由梨
美術が大好きな大学院生です。将来は美術鑑賞に関わる仕事がしたいと思っています。現在、instagram「tanemo0417」「artgram1001」でもアート情報を発信中です!
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