京都市美術館「生誕300年 若冲の京都 KYOTOの若冲」
撮影・文 [エリアレポーター]
胤森由梨 / 2016年10月3日
茶目っ気たっぷり若冲ワールド
10月4日から、生誕300年を迎える伊藤若冲の展覧会が、ゆかりの地である京都で開催されています。
若冲は、河原町に程近い錦市場にある青物問屋の長男として生まれました。彼は家業のかたわら、当時絵画マーケットで大きな市場を占めていた、狩野派、尾形光琳、中国の元代・明代の画法を学びました。そして40歳という若さで家業を弟に譲り、亡くなるまで絵を描き続けました。
若冲が生まれ育った18世紀の京都は、朱子学を重んじる江戸とは異なり、中国からの影響で様々な思想が生まれ、自由な精神が育まれていました。若冲の作品はそうした自由な精神風土の中で描かれたため、同時代の江戸で活躍した画家の作品と比べても、茶目っ気たっぷりです。
以下で特に印象深かった作品と、展覧会の様子をご紹介していきます。
伊藤若冲《布袋図》、個人蔵(展示期間 通期)
この作品は本展覧会の図録の表紙にも使われている作品で、布袋さんがこちらにあっかんベーをしています。若冲のお茶目さがにじみ出ていますよね。
伊藤若冲《雪中雄鶏図》、細見美術館(展示期間10月4日〜11月6日)
雪が積もった冬の日に、雪の中に餌を探す雄の鶏が描かれています。近年の研究では、この雄鶏が「世俗を離れ、風雪に耐え、ひとり自己の信じる道を追求する求道者」のアレゴリーであるという解釈もあります。
伊藤若冲《樹花鳥獣図屏風》(右隻)、静岡県立美術館蔵(展示期間11月22日〜12月4日)
伊藤若冲《樹花鳥獣図屏風》(左隻)、静岡県立美術館蔵(展示期間11月22日〜12月4日)
この作品は「升目(ますめ)描き(縦横1cmの方眼に彩色を施す方法)」という、若冲が発明した面白い手法で描かれています。右隻は獣尽くし、左隻は鳥尽くしで描かれています。中には若冲が想像して描いた架空の動物もいるので、探してみるのも面白いかもしれません。
この展示室は鯉、鯉、鯉、と見渡す限り鯉の絵。すべて若冲が描いた作品です。当時は男児が生まれると、鯉が龍に変容するように男児がすくすくと育って出世してほしい、との願いから、こうした鯉の絵が多く描かれました。
この展覧会では、若冲の傑作一点のみを展示するのではなく、このように気軽に描いた作品も合わせて展示されています。
会期中、数回に分けて展示替えが行われるため、何度訪れても楽しめます(大きく切り替わるのは11月8日です)。
また、若冲が生まれ育った錦市場では、若冲の作品が商店街のシャッターにライトアップされる、「錦市場商店街ナイトミュージアム」が10月30日まで開催中です。こちらにもぜひお立ち寄りください。
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胤森由梨
美術が大好きな大学院生です。将来は美術鑑賞に関わる仕事がしたいと思っています。現在、instagram「tanemo0417」「artgram1001」でもアート情報を発信中です!
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