大阪市立美術館「壺中之展(こちゅうのてん)-美術館的小宇宙」
撮影・文 [エリアレポーター]
胤森由梨 / 2016年11月7日
あっと驚く壺の中 選りすぐりの名品大公開!
今年、開館80周年を迎える大阪市立美術館が、約8400件にものぼるコレクションの中から選りすぐりの300件を公開します。
展覧会のタイトルは「壺中之展(こちゅうのてん)」。これは中国の故事「壺中の天」から着想を得て付けられました。
(左から)《白磁四耳壺(はくじしじこ)》唐・8世紀 / 《白磁四耳壺》唐・8世紀。
その昔、漢で薬売りの老人が壺の中へ飛び込むのを見たという費長房が、ある老人に自分も壺の中に一緒に連れて行ってくれるよう頼み、ともに壺の中の世界へ行きました。そこには別天地が広がり、二人は美味い酒を飲んで帰ったそうです。テーマとなった壺はこんな形でしょうか・・・?
この展覧会は不思議な壺の中に入り込んだ費長房のように、普段の展覧会とは趣向が異なる面白い展示、例えば丸や八角形の形のものばかりを集めた章など、一風変わった興味深い展示がお楽しみいただけます。
これまで日本美術や中国美術に馴染みのなかった方も、この展覧会で親近感を持っていただけるのではないでしょうか。
以下に特に印象深かった作品を紹介していきます。
狩野宗秀《四季花鳥図屏風》桃山・16世紀 田万コレクション
狩野宗秀は一世を風靡した兄永徳の影に隠れてしまい、現在ではさほど有名ではありませんが、永徳に画法を学び、作風も近いと言われています。確かに作品の醸し出す雰囲気が、どことなく兄永徳を彷彿とさせます。
この作品は宗秀の代表作で、間近でこの作品を見てみると、豪華さ、細部の繊細さには目を見張るものがあります。
伊藤若冲《蔬菜図押絵貼屏風》江戸・寛政6年(1794年)
今年は生誕300周年を迎える若冲が全国でブームとなっていますが、こちらの展覧会でも若冲が野菜をどーんと描いた作品が展示されています。
(左から)重要文化財 葛飾北斎《潮干狩図》江戸・19世紀 / 歌川国貞《花魁図》江戸・19世紀前半
葛飾北斎の《潮干狩図》は北斎が50歳の頃に描いた肉筆浮世絵で、重要文化財に指定されています。修復して綺麗になった後初公開です。絵の背景に描かれた富士周辺の雲、空の描写や岩、さらには遠山に施された陰影などからは北斎が西洋画の技法を体得していたことがうかがえます。
重要文化財《仏涅槃図》、南北朝・14世紀 大阪・長宝寺
この作品は釈迦の入滅の様子を描いています。菩薩や仏弟子、八部衆、天人、俗人の男女、動物や虫までもが釈迦の周りに集まっています。皆目を泣きはらした状態で描かれていますが、悲しみの表現方法も様々です。動物たちも口元に花を咥えて集まっています。
この展覧会は会期が1ヶ月弱と短いですが、毎週土日には秋季連続美術講座と題して、展覧会に合わせたテーマで学芸員による解説があります。
この機会に日本美術や中国美術、仏教美術に関する造詣を深めてみませんか。
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胤森由梨
美術が大好きな大学院生です。将来は美術鑑賞に関わる仕事がしたいと思っています。現在、instagram「tanemo0417」「artgram1001」でもアート情報を発信中です!
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