京都国立近代美術館「茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術」
撮影・文 [エリアレポーター]
胤森由梨 / 2016年12月16日
五感で楽しむ茶碗の世界
約450年前に侘茶を大成した千利休の求めに応じて長次郎が生み出した樂茶碗。樂茶碗の技は一子相伝で大切に守られ、現代まで続いています。現代に至るまで、後継者は長次郎の茶碗を自分なりに解釈した上で、各々の哲学を作品の中でどのように表現するか、試行錯誤を繰り返してきました。
長次郎から始まった樂茶碗。現代の十五代吉左衞門に至るまで、どのような軌跡を辿ってきたのでしょうか。
この樂茶碗、見た目の美しさはさることながら、その質感にも注目です。実際に茶碗を手に取ってみるとどんな質感だろうか、抹茶が入っているのを想像すると美味しそうに見えるだろうか、と想像しながらご覧頂くと、一層楽しめるかもしれません。
以下に初代長次郎の代表作から十五代吉左衞門に至るまで、印象深かった作品をご紹介します。
初代 長次郎《黒樂茶碗 銘 大黒》重要文化財 桃山時代(16世紀) 個人所蔵
この《大黒》は利休の侘びの思想がもっともよく表れています。装飾性が一切排除されたこの作品は、ずっしりと重みがありながらも手にすっぽりと収まるような、そんな印象です。
六代 左入《赤樂茶碗 銘 毘沙門》 享保18年(1733年) 樂美術館所蔵
これは、赤黒200碗の連作「左入二百」の一つです。黒と赤が樂茶碗の代表的な色合いですが、この作品は赤い釉景色がとりわけ美しい一品です。つるつるとした手触りで、お茶の深い緑がよく映えそうです。
十一代 慶入《貝貼浮文白樂茶碗 銘 潮干》 樂美術館所蔵
見込み(茶碗の内側)の部分に貝と小さな石のレリーフを貼り付け、初夏の海浜をイメージしています。抹茶を飲み終えた後にこの貝が見えたら、と想像すると楽しい一品です。
十五代 吉左衞門《焼貫黒樂茶碗》 平成24年(2012年) 東京国立近代美術館所蔵
こちらの作品、土台となる土(胎土)に白土を用い、下部の方は銅釉を使い、上部にはコバルト釉を用いて色彩を表現しているそうです。こちらは表面がザラザラとしながらも、口当たりは柔らかそうです。現代風の和室に合いそうな一品です。
この展覧会では、樂家に大きな影響を与えたと言われる、本阿弥光悦の茶碗を始め、本阿弥光悦と共同で多くの作品を制作した俵屋宗達の作品も展示されています。
俵屋宗達筆《舞楽図屏風》 醍醐寺所蔵
色、配置、構図が見事にマッチしています。
次に展覧会会場をご紹介します。
初代長次郎の作品から十五代吉左衞門の作品に至るまで、順を追って紹介しています。
こちらはVR体験コーナーです。ここでは、十五代樂吉左衞門が設計の草案・監修した佐川美術館樂吉左衞門館の茶室と、彼のインタビューをご覧頂けます。
展示された樂茶碗の中で、どれか一点を選んで抹茶を飲むとしたらあなたはどの茶碗を選びますか?
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胤森由梨
美術が大好きな大学院生です。将来は美術鑑賞に関わる仕事がしたいと思っています。現在、instagram「tanemo0417」「artgram1001」でもアート情報を発信中です!
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