佐藤忠良《カンカン帽》
ポーラ美術館がある箱根町は、温泉あり、さまざまなジャンルの美術館ありの関東近郊屈指の観光地です。ポーラ美術館は、「森の遊歩道」を敷地に備えた自然と美術が調和した素敵な場所です。
坂東優《雪の子Ⅰ》
現在、ポーラ美術館開館15周年を記念して20世紀を代表するふたりの巨匠「ピカソとシャガール 愛と平和の讃歌」が開催されています。
会場入口
1881年生まれのピカソと1887年生まれのシャガールには、故郷を離れパリで暮らし、2つの世界大戦を経、ついに故郷に戻ることなく、異邦人としてフランスで90歳を超える長い生涯を終えたという共通点があります。
しかし、2人の芸術における表現方法は大きく異なっています。
それは、スペインの光あふれた地で生まれ、開放的なピカソと厳寒の地ロシアで生まれ、敬虔なユダヤ教徒であったシャガールが持つそれぞれのバックボーンが大きく影響しています。本展は、ところどころに2人の作品を並べられた壁があり、それぞれの作品が時には対峙するように、時には呼応するように鑑賞することができます。
現実の2人は、共通する友人が多く存在していたものの、親しく交わることはなかったといわれます。キュビスムの旗手でもあり、次々と実験的で革新的な表現を生み出していた時代の寵児としてのピカソ。フランス美術界ではそんなピカソよりも評価が高く、パリ・オペラ座の天井画を任されたシャガール。同じ時代を生きた者同士であったればこその複雑な想いがそこにはあったのでしょうか。
会場
見どころは、2人の代表作でもある《ゲルニカ》と《平和》を原画として制作された幅6mを超える巨大なタペストリーです。
原画:パブロ・ピカソ、タペストリー制作:ジャクリーヌ・ド・ラ・ボーム=デュルバック 《ゲルニカ (タピスリ)》1983年 ウール、木綿 群馬県立近代美術館蔵 ©2017-Succession Pablo Picasso-SPDA (JAPAN)
《ゲルニカ》は故郷スペイン内乱の際行われたゲルニカへの無差別爆撃を批判する気持ちから制作されたピカソの代表作と言われる壁画です。このタペストリーの糸は、直接ピカソ本人から色の指示を与えられたものだそうです。
原画:マルク・シャガール、タペストリー制作:イヴェット・コキール=プランス 《平和》 2001年 ウール 個人蔵
© JASPAR, 2017 except for tapestries made with Marc Chagall
© Tapestry by Marc Chagall made in collaboration with Yvette Cauquil-Prince / JASPAR,2017 G0860
《平和》は、ニューヨーク国際連合本部ダグ・ハマーショルド記念講堂のステンドグラスとして制作されたものです。シャガールの豊かな色彩を忠実に再現したタペストリーです。
戦争により運命を狂わされ、故郷に帰ることなく生涯を終わった2人の平和への祈りがテーマとなっています。
会場
展覧会では、2人の「愛」とは何かを私たちに問いかけてきます。
マルク・シャガール 《誕生日》 1923年 油彩/カンヴァス AOKIホールディングス蔵
© ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2017, Chagall® G0860
《誕生日》は、妻ベラとの結婚式直前のシャガールの誕生日を描いた作品です。ベラの持つ花束はシャガールへの贈り物だったのでしょうか。身をよじりくちづけをするシャガールに驚いたようなベラの表情が印象的です。じゅうたんの鮮やかな赤、美しい模様のファブリックに囲まれた室内は、幸福に満ちています。
ピカソの芸術の原動力は「恋愛」だといわれます。一方シャガールにとっての愛は、ユダヤ教の教えに基づいた神からの恩恵だといわれます。
身近にいる恋人、妻、子をいとおしむように見つめられた肖像画を描いたピカソと浮遊する恋人たちや動物たちを色鮮やかに描いたシャガール。表現は異なるものの、作品を眺めているうちに、穏やかな優しい気持ちになってきます。
併設レストラン「アレイ」では「ピカソとシャガール 愛と平和の讃歌」特別メニュー「太陽の食卓」(¥2,810)が用意されています。
上はデザートの「サワークリームのガトーとオレンジタルト」。サワークリームとベリー、オレンジとチョコレートの組み合わせがマッチしていておいしいです。
ミュージアムショップ
コンパクトながら、おしゃれなグッズがいっぱいのミュージアムショップです。「ピカソとシャガール 愛と平和の讃歌」オリジナルグッズも5点ほどありました。
上はピカソの《海辺の母子像》をイメージしたノンカフェインコーヒー(¥594)。
このコーヒーとシャガールをイメージしたフルーツゼリー(8粒入り¥480/22粒入り¥1,320)をお土産にしました。3種の豆が楽しめる1杯用のドリップコーヒーとフルーティなゼリーで美術館の余韻を帰宅後も楽しみました。
これからゴールデンウィーク、夏休みの計画される時ですね。緑豊かな恵まれたロケーションで巨匠たちの愛と平和の讃歌に耳を傾けるの良いのではないでしょうか。(会期中展示替えがあるようなので、詳しくは美術館サイトをご覧ください)