瀬戸内海の豊かな暮らし
瀬戸内海、実は世界の中でもとても珍しい海。
周囲をほとんど陸地に囲まれた海域(閉鎖性海域)の多くは外洋からの海水の出入り口が一つであるのに対して、瀬戸内海はその入り口がなんと3つ。
こうした特殊な環境に加え、700を超える島々と複雑な海底地形によって、多様な生物が生息し、人間は豊かな海の恵みを享受しています。
この展覧会では、瀬戸内海に住む生き物と、人間との関わりを包括的に明らかにしています。
会場に入って、まず目を引いたのがこちら。
こちらは、2015年に大阪府岬町に漂着したザトウクジラの骨格標本です。
全長なんと7m。
これでもまだ子供だそうで、成長すると10m以上になるんだとか。
瀬戸内海には、スナメリというイルカに似た鯨が生息していますが、たまにこうした大型の鯨やイルカが迷い込んでくるそうです。
瀬戸内海の自然環境として興味深かったのは干潟です。
干潟にはいろんなハゼが生息していますが、それらの多くは自分の家を持たず、なんと甲殻類の巣穴を自分の住処にしています。
学芸員の話によると、ハゼと甲殻類は共存共栄の関係ではなく、ハゼしか利益を得ていないんだとか。
また、面白いことに、ハゼは甲殻類の家だったらどこでもいい、というわけではなく、好みの底質や地盤の高さ、塩分などの環境要素に基づいて住処とする場所を決めているそうです。
例えばこのツマグロスジハゼは
テッポウエビの巣穴を好んで居候するそうです。
こちらは干潟に住む生き物を紹介するコーナーの展示風景です。
少し低めの展示ケースには、多種多様な生き物が展示されています。
水中生物だけではありません。
瀬戸内海にはこんなにたくさんの種類のカモが生息しているってご存知でしたか?
私はこの中でおそらく2種類しか見たことがないと思います。
自分が見たことがあるカモがどの辺の地域に多く生息しているのかを見ると、楽しいかもしれません。
こちらは日本の漁業を紹介するコーナーです。
瀬戸内海は温暖で波も穏やかであるため、昔から様々な漁業が行われてきました。
これは、定置網漁を模したコーナーです。
定置網漁は、生き物が障害物に沿って移動する習性を利用し、魚を誘い込む仕掛けです。
こちらは、「衆鱗手鑑(しゅうりんてかがみ)」です。
この絵図は、18世紀中頃に高松藩主松平頼恭が作らせたもので、幕府へと献上したことが知られています。
実物の魚と比較すると、実物と見紛うほどに、細かいところまで丹念に描きこまれています。
この展覧会には他にも、こんな面白い展示品がありました。
なんとこちら、およそ60年前の小学生の自由研究。
60年前の自由研究がこれほど綺麗に現存している、というのも驚きですが、今では、これが瀬戸内海の生き物の生態系を知る上での重要な証言になっています。
お子さんの自由研究がもしかしたら、未来の研究に大きな役割を果たすかもしれません。
もうすぐ夏休み、自由研究のヒント探しに博物館へお出かけしてみてはいかがでしょうか。
最後に体験コーナーをご紹介します。
こちらは、貝屋さんごっこが出来る、ハンズオンコーナーです。
見慣れた貝から、普段触ることのないような貝までたくさんあります。
大人も子供も、見て、触って楽しめます。
是非会場でご体感ください。
エリアレポーターのご紹介
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胤森由梨
美術が大好きなアートライターです。美術鑑賞に関わる仕事を広げていきたいと思っています。現在、instagram「tanemo0417」「artgram1001」でもアート情報を発信中です!
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